2026年5月27日

エンタープライズAI導入の隠れた障壁:技術的負債

Holland Barry, Field Chief Technology Officer of Cloud and Infrastructure, DXC Technology



AIを本番環境で推進しようとしているCIOやCTOにとって、技術的負債はますます大きな障壁となっています。長年にわたって先送りされてきたアップグレードや、引き継がれた複雑性に対処できていない組織では、AI投資がビジネス成果と結びつかないままになっています。

この課題は複合的に拡大しています。2026年初頭、M&A活動は9.7%増の8,611億ドルに達しました。企業の経営層が成長を加速するために買収を推し進める中、買収のたびに互換性のないシステムが、すでに分断された環境の上に積み重ねられ、AI主導のイノベーションを阻む負債そのものを増大させています。

技術的負債が残り続けるのは、リーダーがそれを認識していないからではありません。対処することによって、誰も引き受けたくないような混乱が生じてきたからです。変わったのは、待つことのコストです。技術的負債がオペレーションを遅くしていただけの時代には、それはリーダーが吸収できるレベルのコストでした。しかし、それがAIを阻むようになると、戦略的も重大な負債へと変わります。

企業は戦略的なアプローチさえあれば、技術的負債を管理することができます。買収・合併の最中であれ、既存の環境を管理している場合であれ、CIOやCTOが検討すべき実証済みのロードマップをご紹介します。 

技術的負債を測定し、ベースラインを確立する

企業の経営層が技術的負債に対処するためには、まず自社がどれだけの負債を抱えているのか、そしてそれがどこに存在するのかを理解する必要があります。DXCのTechnical Debt Analyzer(技術的負債分析)は、短いアンケートを通じて、ライフサイクルリスク、アーキテクチャの肥大化、オペレーション上の摩擦など、負債に関する指標を可視化し、迅速に方向性を示すスナップショットを提供します。このアプローチの価値はスピードにあります。数分でベースラインを共有し、より深い分析が必要かどうかについてリーダーシップの認識を揃える手助けをします。

このベースラインがなければ、経営層はエビデンスではなく思い込みに基づいて優先事項を議論することになり、スピードが最も重要なまさにその瞬間に意思決定が遅れてしまいます。

分断された環境全体を可視化する

ほとんどの企業は複数のモニタリングツールに依存していますが、テクノロジー環境全体で稼働しているすべてを一目で見渡せるツールは存在しません。事業部門はそれぞれ異なるプラットフォームを採用し、買収は新たなプラットフォームを持ち込み、見えない部分が時間とともに蓄積されていきます。これはほとんどのCIOが認識している課題ですが、解決できている人はほとんどいません。

DXC OASISは、組織の既存システムの上に位置する統合レイヤーとして機能し、分断されたモニタリング、サービスマネジメント、アセットマネジメントのツールを単一のビューに接続することで、この課題に対処します。企業がすでに導入しているテクノロジーやプラットフォームを置き換える必要はありません。それらを接続し、個々のプラットフォームでは提供できない全体像をさまざまな立場のリーダーに提供するのです。

買収後の複雑性を整理しているリーダーや、肥大化した環境を管理しているリーダーにとって、この統合されたビューは、不完全な情報に基づくオペレーションを解消し、自信をもって意思決定を進めることができるようにします。


要点まとめ

  • 技術的負債がAI導入を阻むようになると、それは戦略的に重大な負債となります。
  • 負債分析を実施し、既存システムの統合されたビューを獲得することで、企業のリーダーは技術的負債に対してスピードと自信を持って行動できるようになります。
  • 技術的負債を戦略的に管理することで分断が削減され、運用コストが低下すると、ビジネスを前進させるための投資に予算を振り向けることができるようになります。

インサイトを改善行動につなげる

可視化だけでは十分ではありません。技術的負債の所在を把握できるようになったら、次はそれに対して行動する能力が必要です。

DXC OASISは、そのオブザーバビリティレイヤーに加え、システム横断で機能するエージェンティックオーケストレーションフレームワークを組み合わせています。これにより、問題を浮かび上がらせ、根本原因分析を加速し、技術的負債がどこに蓄積しているかについてチームに明確な全体像を提供します。人間が個々のツールにログインするのを待つのではなく、DXC OASISは負債に関連する問題を早期に特定し、推奨事項をAIが提供することで、チームが優先順位を付けて自信を持って行動できるよう支援します。これにより、オペレーションをリアクティブなサポートから、情報に基づいたインテリジェントな意思決定へとシフトさせます。

組織は自社の技術的負債がどこにあるかを把握できるだけでなく、それを体系的に削減し始めることができます。これは、根本的な障害の減少とインシデント解決の迅速化を意味し、ITチームが分断されたツール間のトラブルシューティングではなく、戦略的な業務に集中できるよう解放します。


本当に変えるべきものを戦略的に特定し、優先順位を付ける

すべての技術的負債が同じ対応を必要とするわけではありません。統合または廃止できるシステムもあれば、モダナイゼーションが必要なシステムもあります。重要なのは、それぞれに対する適切な対応を見極めることです。

DXCのConsolidate to Innovateアプローチは、エンタープライズが分断を解消し、運用コストを低下させることを支援し、ビジネスを具体的に前進させるものへの投資に予算を振り向けられるようにします。モダナイゼーションが必要な場合には、DXCのPrecision Guided Modernizationアセスメントが、ビジネスインパクトに基づいてどのシステムを優先すべきかをリーダーが評価する手助けをします。

DXCのアプローチはすでに成果を上げています。DXCはDellと協力し、Dell Digital Edgeを展開して現場により近い場所にコンピューティングパワーをもたらし、ある自動車メーカーがインフラストラクチャの複雑性を削減し、可視性を向上させることを支援しました。その結果、AIを活用したオペレーションが本番環境で稼働し、品質、稼働時間、生産速度において実際の改善を実現しています。


今後の展望

技術的負債は一夜にして蓄積されたものではなく、ひとつの取り組みで解消されるものでもありません。しかし、ベースラインを明確化し、可視性を獲得し、発見したことに対して行動し、投資先の優先順位を付ける経営層は、自社の組織をパイロットから、実際に成果を出すAIへと前進させることができます。

買収のたびに複雑性が増し、先送りされたアップグレードのたびにリスクが重なり合う環境において、技術的負債に対処するリーダーは、次に来るものに備えるだけではありません。未来を決定する側に立つのです。



著者について

Holland Barry  テクノロジーに特化した幅広い役職で25年以上の経験を持つテクノロジーエグゼクティブ。その専門領域は、従来型ITインフラストラクチャ、パブリックおよびプライベートクラウド、オートメーション、ネットワークおよびクラウドセキュリティにわたり、官民両セクターの組織と協働してきました。DXC TechnologyのCloud & Infrastructure フィールドCTOとして、DXCのクラウドおよびインフラストラクチャオファリング全体のテクニカルプリセールを統括しています。彼のチームはテクノロジープロバイダーと連携し、顧客のITジャーニー全体を通じてイノベーションを推進し、価値を提供しています。