2026年5月26日
Clean Core:SAPから真の成果を引き出す実践原則
By Dee Lucero DXC Global SAP Practice 戦略的成長担当責任者
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カウントダウンはもはや仮定の話ではありません。SAPのECCに対する主流メンテナンスは2027年に終了します。レガシーERPで基幹業務を動かし続けている組織にとって、残された時間は確実に短くなっています。問われているのは「モダナイズするかどうか」ではなく、「手遅れになる前に、自分たちの条件で実行できるか」です。
私はこれまで何年にもわたり、まさにこのプレッシャーに直面する組織と共に歩んできました。業種も地域もスタート地点もまったく異なる組織です。しかし共通しているのは、ビジネスは変革プログラムのために立ち止まってはくれないということです。お客様の期待は変化し、規制要件は厳しくなり、テクノロジーはほとんどのロードマップが想定するよりも速く進みます。そしてそのすべてが進行する中で、業務の中心にあるERPシステムは動き続けなければなりません。
モダナイゼーションをうまく進められる組織は、必ずしも最大の予算や最も積極的なスケジュールを持つ組織ではありません。アーキテクチャを最初に正しく設計できた組織です。
これは私が数え切れないほど目にしてきたパターンです。組織は長年にわたりカスタマイズを積み重ねていきます。善意で行われた変更によって、小さな複雑性の層が加えられていきます。しかし時間が経つにつれ、柔軟性だったはずのものが、いつの間にか脆さに変わっています。変更に時間がかかるようになり、リスクが増大し、確信が揺らいでいく。やがて、ビジネスを支えるために構築されたERPシステムが、逆にビジネスを制約し始めるのです。
Clean Coreという実践原則は、この問題に対するSAPのアーキテクチャ上の回答です。ERPシステムを標準化された安定した状態に保つことで、毎回大きな混乱を伴うことなくアップグレードや新機能を取り込めるようにします。拡張機能、連携、カスタムロジックはコアの外側の適切な場所に配置し、標準インターフェースを通じて接続します。こうすることで、断続的にではなく継続的に進化できるシステムが実現します。
これが最も重要になるのは、S/4HANAへの移行計画を始めるときです。移行こそ、レガシーの技術的負債の清算が求められる場面だからです。カスタマイズを放置してきた組織は、前に進む前にニュートラルな状態に戻すだけで、膨大な時間とコストを費やすことになります。一方、Clean Coreの原則を早期に取り入れ、それを守り続けてきた組織は、移行の時点で圧倒的に有利なポジションに立てます。
S/4HANAへの移行は、長期にわたる技術的に複雑なプロセスになりがちです。DXC Fast RISE with SAPは、その複雑さを圧縮するために設計されたプログラムです。独自のツール、実績あるアクセラレーター、体系化されたチェンジマネジメントを活用し、12か月以内での移行完了を支援します。目標は、リスクと混乱を抑えながら、移行作業の管理に追われるのではなく、モダンな機能から価値を引き出し始められる段階にお客様を届けることです。
これが機能することは、私たち自身で実証済みです。DXCは自らRISE with SAPの旅を歩んでおり、70か国以上にわたる115,000人以上の従業員を支えています。このプログラムを自社で運用しながら、同時にお客様にも提供する。この経験が、他では得がたい実践的な視点を私たちに与えてくれています。私たちは外部からアドバイスしているだけではありません。お客様が直面するのと同じ意思決定を、自ら日々経験しています。
DXCのある事業部門では、最近、老朽化したレガシーERP環境からSAP Cloud ERPへの完全な移行を完了し、変革ライフサイクルのすべてのフェーズを経験しました。その結果、大幅なコスト削減、業務効率の向上、処理パフォーマンスの強化を実現しています。さらに重要なのは、この経験がお客様へのご支援に持ち込む実践知をより一層深めたことです。
移行が完了すると、Clean Coreは移行のための原則から、日々の戦略的な実践原則へと役割を変えます。ERPシステムを今後どのように管理・統制していくかを定義し、標準化され、セキュアで、次に来るものを受け入れられる状態を維持するためのものです。
私は、基盤を安定させただけで真の推進力を取り戻した組織をいくつも見てきました。コアが本来の役割——在庫から給与、財務に至るまでビジネスを確実に動かすこと——に専念できるようになると、その周囲のすべてが変えやすくなります。Clean Coreによってイノベーションがなくなるわけではありません。イノベーションが然るべき場所に、意図を持って配置されるようになるのです。
拡張機能は差別化が求められる場所に置きます。連携はインサイトを生み出す必要がある場所に構築します。カスタム機能は中心を損なうことなく、本来あるべきエッジに配置します。実際にやってみると、これは制約ではありません。コントロールを犠牲にすることなくスピードを手に入れるための方法です。
ここ数年で本質的な変化が起きています。はっきり言えば、AIはもはや別のプロジェクトとして評価し、後からSAPにどうつなげるかを考えるようなものではなくなりました。AIはプラットフォームに組み込まれ、データのすぐそばで、プロセスのすぐそばで、重要な意思決定のすぐそばで動いています。
この変化がもたらす実務上の効果は大きなものです。販売受注管理を例に取りましょう。多くの組織では、価格の不一致、フルフィルメントのリスク、異常な需要パターンといった問題は事後に発覚します。しかもたいていの場合、すでにお客様の体験に影響が出た後です。クリーンで信頼できるデータの上で動く組み込みインテリジェンスがあれば、受注が作成される時点でそうした異常を検知できます。チームは問題への対処から問題の予防へとシフトし、供給の調整、価格の検証、フルフィルメントの再ルーティングをリアルタイムで行えるようになります。
事後に届くインサイトではなく、その瞬間のアクションを支えるインサイト。この違いこそが、単なるレポーティングツールと、業務を動かす力としてのインテリジェンスの違いです。
同じパターンが財務領域でも現れています。例外処理はこれまで、事後の分析と手作業による調査に頼ってきました。請求書の不一致、予期しない収益の差異、決済の遅延——こうした問題です。インテリジェンスが財務プロセスに直接組み込まれると、例外はトランザクションが発生した時点で特定できるようになります。期末締めまで待つ必要はありません。チームは問題の調査に費やす時間を減らし、ビジネス全体に波及する前に解決することに集中できるようになります。
一つひとつを見れば、これらは小さな改善に見えるかもしれません。しかし全体として見ると、より根本的な変化が起きていることがわかります。プロセスは待つのではなく、自ら適応し始めます。自動化は責任の所在を曖昧にすることなく摩擦を取り除きます。データは過去を振り返るためのものではなく、今の業務を動かすものになります。
ここにおいて、Clean Coreと組み込みインテリジェンスは互いを強め合います。基盤が安定していれば、インテリジェンスを信頼できます。インテリジェンスが組み込まれていれば、プロセスはより強靭になります。そしてプロセスが強靭であれば、組織は変化に対応できるという本物の自信を持てるようになります。計画があるだけではなく、実際にやれるという自信です。
変化そのものも、特別なことではなく日常になります。コアがクリーンで適切に統制されていれば、アップデートは混乱を伴うプロジェクトではなく、予定通りのイベントとして届きます。変革は一度きりのプログラムではなくなり、組織に備わった継続的な能力として機能し始めます。この違いは一見地味ですが、常に追いつこうとしている組織と、常に準備ができている組織の差を生みます。
今後を見据えると、この基盤こそが、より自律的なプロセス、よりインテリジェントなワークフロー、エンタープライズ全体でのより協調的な意思決定を可能にするものです。これらは遠い将来の話ではありません。組織が今まさに投資を進め、どうスケールさせるかを具体的に描いている優先事項です。
しかし、基本ができていなければ何も始まりません。コアをクリーンに保つこと。本当に業務上の価値を生む場所にインテリジェンスを適用すること。過去のためではなく、これから来るもののために設計すること。
SAPは、意図された通りに設計し運用すれば、しっかり機能します。そしてそれが実現したとき、ビジネスは他の方法ではなかなか得られない確信を持って前に進めるようになります。
Dee Lucero DXC Technology Global SAP Practice 戦略的成長担当責任者
オーストラリア・シドニーを拠点とし、AI時代のモダナイゼーションとイノベーションに注力し、SAPビジネス戦略、デリバリーエクセレンス、お客様の変革成果をグローバルに統括しています。
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