2024/07/08
by Torsten Stiehm、Dr. Ulrich Wurstbauer、Andreas Mütsch

※本稿はDXC Technologyのグループ企業であるLuxoftの記事を翻訳したものです。
出典:Small car, big gain — how a toy car paves the way toward software-defined vehicles

 

概要

  • ソフトウェアデファインドビークル(SDV)の普及に向けて、新しいサービスやツールの組み合わせにより、車両の開発、展開、運用、保守、アップデート、アップグレードにかかる労力を削減することが可能になってきている
  • 自動車メーカーは、車両の通信や、サードパーティサービスへの接続、データ駆動型の開発など、ソフトウェアライフサイクルのさまざまな側面を調整できる強力なバックエンドを必要としている
  • VɪᴏʟᴀRᴇᴅ Cᴀʀは、シームレスに接続されたSDVのデモを行うために開発された。モジュール型のコンテナ化されたソフトウェアアップデートをOver-the-Air(OTA)で実施可能。扱いやすいフォームファクターで、研究室や展示会での利用に適している

 

屋根裏部屋の掃除でかっこいいリモコンカーを見つけたら、捨てないでください。最新のソフトウェア開発とテストに役立つかもしれません。VɪᴏʟᴀRᴇᴅ Cᴀʀがその証拠です。

 

SDV、その課題と前進方法

現在のソフトウェアデファインドの世界では、自動車はますますソフトウェア主導になっています。しかし、電子制御ユニット(ECU)で実行されるソフトウェアは依然として個別に開発・提供されており、その量は増加しています。このため企業は、社内のソフトウェア開発能力を強化し、独自のモジュール型ソフトウェア製品ポートフォリオを開発することで、ソフトウェアとソフトウェアライフサイクルをより適切に制御する必要があります。

LuxoftとRed Hatは、オープンソースのソフトウェア開発手法と、自動車業界の標準、関係する必要なツールスイートおよびプロセスを組み合わせることで、SDV開発におけるユースケースに共同で力を注いでいます。私たちは協力してSDVの製品バリエーションを習得し、そのすべてに対して整備工場に行かなくても車のソフトウェアを機能拡張可能なOTAアップデートに向けた、包括的なアプローチをとっています。

目標は、SDV開発への移行を可能にすることにより、お客様がソフトウェアとデータに対する制御を強化し、ベンダーロックインなしで独自の差別化を推進できるようにすることです。モジュール型ソフトウェアのアップデートを部分的にプッシュしたり、オンデマンドソフトウェア機能を備えたデジタルサービスを通じて新しい収益源を生み出したり、位置情報に基づいた安全性とセキュリティのアップデートを車に送信したり、可能性は無限大です。

 

おもちゃの車を使う理由

VɪᴏʟᴀRᴇᴅ Cᴀʀプロジェクトは、自動運転機能を例として、ソフトウェア開発のためのデータの取得、処理、演繹のサイクル全体をわかりやすく示すことを目的としています。VɪᴏʟᴀRᴇᴅ Cᴀʀが実演しているのは、世界中の車両群をOTAで管理、アップデートする方法です。このプロジェクトでは、仮想ECUと、最先端のコンテナおよびIoTテクノロジーを組み合わせています。バックエンドのOpenShiftによって実現される、Red Hatの優れたコンテナ管理機能があるため、Kubernetesを車に載せる必要はありません。システム全体が、オープンソースソフトウェアをベースとしています。

展示ブースでこれらすべてを紹介するときに、おもちゃの車は扱いやすく、人目を引く上に、安価に構築と保守が可能です。

 

VɪᴏʟᴀRᴇᴅ Cᴀʀのデモ

デモでは、自動運転の追従車が楕円形のテストコースを周回します。VɪᴏʟᴀRᴇᴅ Cᴀʀと呼ばれるオープンソースのソフトウェアデファインドビークルは、先行車と安全な距離を保ちながら同じ経路を追従します。デモの目的上、アップデートを受信する自動運転機能としてアダプティブクルーズコントロールを使用しますが、これは車載ソフトウェアスタックのどのコンポーネントでもかまいません。

ペースカーを追従するVɪᴏʟᴀRᴇᴅ Cᴀʀ(紫色の車)

さて、新しい規制により、最小車間距離が短くなった一方で、カメラのソフトウェアアップデートが義務付けられたとします。テスト作業によって、機能安全はすでに実証されています。いよいよ、テスト車両がアップデートを受け取るときになりました。

アップデートをロールアウトするには、事前に決められた安全な場所(充電スタンドなど)に車が位置している必要があります。安全な場所に入ったことが検出されると(Red Hat Connected Vehicle Architecture Patternの一部)、車は保留中のアップデートについてCampaign Managementシステムから通知を受けます。

このデモケースでも、これによって車が停止するため、ソフトウェアを安全にダウンロードしてアップデートできます。適切にアップデートが行われると、車は再び走り始めます。機能が強化され、より安全で優れた運転体験が提供されるようになります。

実行時には、LuxoftのCampaign Managementと、Red Hatの Connected Vehicle Architecture Patternのコンポーネントという、2つのソフトウェアモジュールが必要です。どちらもクラウド内のOpenShift Container Platformで実行されるため、コンテナ化されたスケーラブルなシミュレーション実行環境へのシームレスな接続と、ソフトウェアファクトリーへの統合が可能です。

 

ボンネットの中のテクノロジー

下の図は、現在のVɪᴏʟᴀRᴇᴅ Cᴀʀアーキテクチャの概要を示しています。

VɪᴏʟᴀRᴇᴅ Cᴀʀのデモを構成する各コンポーネントとその相互関係について詳しく見ていきましょう。

VɪᴏʟᴀRᴇᴅ Cᴀʀは、1/10 RCモデルのピックアップトラックです。現在のデモでは追従車として機能し、アダプティブクルーズコントロールを利用して車間距離を保ちながら、前方の車に追従します。

この車のソフトウェアスタックは、オペレーティングシステムのほか、コンテナランタイム、ミドルウェア、アプリケーションレイヤーで構成されています。

この車には、認識処理や屋内位置推定のためのRGBカメラが1台搭載されています。自動コース上にある明確に定義されたマークによる補助を利用することを原則として、バレーパーキングシステムは前方の車両と距離を保ちながら所定のコースを走行します。

ネットワークの観点から見ると、VɪᴏʟᴀRᴇᴅ Cᴀʀはバックエンドに登録されたエンティティです。このため、VɪᴏʟᴀRᴇᴅ CᴀʀはMQTTやHTTPSなどのさまざまな通信プロトコルを使用して、車両レジストリにデータ(テレメトリデータなど)をパブリッシュしたり、コマンドを受信したりできます。

 

バックエンド

バックエンドは、Red Hat OpenShift Container Platformでホストされ、次の2つの主要部分から構成されます。

  • 赤で囲まれた四角部分:
    Red Hat Connected Vehicle Architecture Patternを表しています
  • 紫で囲まれた四角部分:
    Luxoft OTA Campaign Managementを表しています

これらのコンポーネントは、Zone-Change-Adapter(OTA統合)を通じて相互接続されています。さらに、コンポーネントはAPIを通じて直接通信し、OTAアップデートキャンペーンの詳細などの情報を共有します。

 

Red Hat Connected Vehicle Architecture Pattern

このコンポーネントは、車両登録用のレジストリを持ち、車両が接続するためのエンドポイントを提供します。また、車両管理とデータ監視用のユーザーインターフェイスも備えています。車両の位置はこのアーキテクチャによって追跡でき、マップ上に定義済みのゾーンが表示されます。ゾーンを利用することで、車両がゾーンを出入りするときにアクションをトリガーできます。

 

Luxoft OTA Campaign Management

最後にご紹介するのは、Luxoftコネクテッドモビリティが開発したソリューションであるOTA Campaign Managementです。これはバックエンドの一部であり、ソフトウェアアップデートパッケージをキャンペーンとしてバンドル化することで、OTAアップデートを調整します。各キャンペーンは、どのアップデートパッケージをどのターゲット車両グループに提供するかを指定します。キャンペーンのロールアウト中、ゾーンに入ったすべての車(指定されたターゲットグループに属する車)にアップデートが提供されます。キャンペーンは、APIまたはWeb UIを通じて実行、監視できます。VɪᴏʟᴀRᴇᴅ Cᴀʀのデモでは、ゾーン変更イベントの結果として、Zone-Change-Adapterがキャンペーン実行をトリガーします。

 

大志を抱く小さな車

ご覧のとおり、このデモのSDVは小さいかもしれませんが、従来のアプローチに比べてわずかなコストで、OTAアップデートと管理の可能性を最大限に実証することを目指しています。柔軟なオープンソースのソフトウェア基盤とコンテナの実行機能により、開発、テスト、検証を迅速かつ簡単に行うことができます。ぜひ、屋根裏にしまい込んであるリモコンカーを探してみてください。

リモコンカーのエンジンを温めて、SDVに向けたレースに備えましょう。ピットストップからゴールまで、Luxoftはお客様の信頼あるパートナーです。お気軽にお問い合わせください。

 

※日本国内においては、DXCテクノロジー・ジャパンの自動車業界チームがLuxoftのサービス提供の窓口としてサポートしています



著者について

著者について

Torsten Stiehm
ソフトウェア開発者

公的資金による「just better DATA」や革新的な「VɪᴏʟᴀRᴇᴅ Cᴀʀ」デモンストレーターなど、社内R&Dプロジェクトの専任プロジェクトリーダー。職務としては、同デモの全体的な実現や、ハードウェア、ソフトウェア、クラウドコンポーネントのシームレスな統合を担当しています。2022年にLuxoftに加わる前は、実験固体物理学の博士研究員として基礎研究に取り組んでいました。二次元半導体などのナノ材料の非線形光学特性を研究し、超高速量子光学の分野で物理学の博士号を取得しました。

Dr. Ulrich Wurstbauer
自動運転担当技術責任者

Luxoftの自動運転担当技術責任者。自動運転車、自動運転機能開発、仮想検証の分野における戦略的開発を担当しています。現在はシミュレーション、デジタルツインテクノロジー、サイバーフィジカルシステムを主とした自動車テクノロジーに取り組んでいますが、それ以前は固体物理学で博士号を取得しました。博士研究員として、特異な量子物理学的挙動を示す、新しく開発された二次元物質であるグラフェンについて研究を続けました。4件の国内/国際特許出願に加えて、これまでに12本以上の研究論文を執筆しています。

Andreas Mütsch
テクニカルライター

Luxoftのテクニカルライター。ソリューションチームの一員として、技術的な記事や文書の正確性と信頼性に対する責任を負っています。技術プロジェクトにおけるライティングとコーディングの隔たりを埋めることを使命として取り組んでいます。また、応用物理学の学位を取得しています。プライベートでは本を執筆しており、自費出版での受賞歴もあります。