2023/6/5
by John Makin、Ronny Kraehe、Ferdinand Arndt

※本稿はDXC Technologyのグループ企業であるLuxoftの記事を翻訳したものです。出典:The future of automotive repair — AI and self-healing automobiles

 

車の故障や高額な修理費用への不安に別れを告げましょう。なぜなら、自己修復自動車が、車両のメンテナンスに革命を起こそうとしているからです。 

 

複雑な問題

携帯電話から自宅に至るまで、現在、車を運転する多くの人々は、生活のさまざまな側面でデジタルかつシームレスなユーザーエクスペリエンスを期待しています。こうしたユーザーエクスペリエンスは交通手段全般に広がっていますが、特に車で顕著です。これはつまり、自動車メーカーの多くの顧客が求めているのが、馬力やトルクの向上などのメカニカルな機能ではなく、革新的でインテリジェントな運転支援や、インフォテインメント、コネクティビティソリューションといったソフトウェアの機能であるということです。 

ただし、車両に搭載されるソフトウェアの数が増えて複雑になると、エラーが増加します。これらのエラーはできるだけ早く検出して修正し、高品質のユーザーサービスを維持して故障車を減らす (したがって評判や売上の低下を防ぐ) 必要があります。問題は、ソフトウェアの修復や修正を誰が行うのかということです。自動車修理工場の整備士がすべてのログファイルとスタックトレースに手動で目を通して問題の根本原因を特定し、最終的に修正することは無理でしょう。したがって、多くのソフトウェアを搭載した車両には、車両に関するすべての診断データをフリートオペレーションセンターなどのリモート環境に転送して分析する、リモート診断・修理ソリューションが必要です。フリートオペレーションセンターではMLと人工知能 (AI)のサポートを受けながら、特定分野の専門家 (SME) が根本原因の特定と修正を行います (たとえば、車両サービスの再起動や無効化、またはソフトウェアのアップデートなど)。理想としては、分析を活用して予測診断を行い、問題が発生する前にプロアクティブに潜在的な問題を修正できるようになることです。 

自動車業界は今、高度なソフトウェア開発とAI テクノロジーの統合によって、急速な変革を推進しています。したがって、リモート診断・修理は、この分野において最も興味深い進歩の1つである自己修復自動車の開発を実現するための基礎となります。自己修復自動車は、自ら診断して修理できるように設計された車両であり、メンテナンスコストを大幅に削減し、耐用年数を伸ばします。このブログでは、自己修復自動車におけるソフトウェア開発とAIの役割を探り、自己修復自動車が車両メンテナンスの未来にもたらす変革について紹介します。 

自己修復自動車とは

自己修復自動車には、さまざまな問題を自律的に検知、診断、解決できる高度なシステムが搭載されています。これらのシステムが、高度なソフトウェアアルゴリズムとAI主導のテクノロジーを利用して潜在的な問題を特定し、センサーの再調整、エンジン性能の調整、関連するソフトウェアコンポーネントの更新などの修正措置を講じます。 

 

仕組み – 関連する主要テクノロジー

高度なセンサー:  最新車両には多数のセンサーが取り付けられており、温度、圧力、速度などのさまざまなパラメーターに関するデータがリアルタイムに収集されます。これらのセンサーは、車両の性能を監視し、異常を検知するうえで重要な役割を果たし、自己修復自動車に不可欠です。 

機械学習とAI:  機械学習とAIを活用することで、自己修復自動車はセンサーから得たデータを分析してパターンを特定し、重大な問題に発展する前に潜在的な問題を予測できます。AI主導のアルゴリズムにより、車両はメンテナンス作業のスケジュール設定やさらなる損傷を防ぐための性能パラメーターの調整など、情報に基づいた意思決定を行うことができます。 

ソフトウェアの更新:  自己修復自動車では、診断機能を強化し、新たに発生する問題への対応能力を向上させるために、継続的なソフトウェア更新が必須です。OTA (Over-the-Air) アップデートにより、自動車メーカーは車両ソフトウェアをリモートで更新できるため、自己修復システムに常に最新のアルゴリズムと修正を反映できます。 

先進的な材料:  傷ができても自ら修復する能力を持つ自己修復材料は、自己修復自動車には欠かせない素材です。自己修復塗装や自己修復ポリマーなどの素材は、腐食や傷、その他の損傷から車両を保護するのに役立ちます。 

 

開発の理由 — 自己修復自動車のメリット

メンテナンスコストの削減: 問題を自律的に診断して解決することで、自己修復自動車はメンテナンスコストを大幅に削減できます。車自身がメンテナンスを行うため、車の所有者は定期的な点検やサービスにかかる費用を削減できます。 

車両寿命の延長:  迅速かつ効果的に問題に対処することで、自動修復自動車は車両寿命の延長を促進します。タイムリーなメンテナンスと修理により損傷を最小限に抑え、より長期間、車両を最適な状態に保つことができます。 

安全性の向上: 自己修復自動車は、事故につながる可能性のある重大な問題を検知して解決できるため、安全性が全般的に向上します。高度な診断機能は、車両の性能や安全性を損なう可能性のあるシステムの故障や誤動作を防止するのに役立ちます。 

環境面でのメリット:  自己修復自動車は、エンジン性能を最適化して部品交換の頻度を減らすことで、二酸化炭素排出量を削減し、車の所有による環境への影響を最小限に抑えることができます。 

 

 自己修復の未来

自己修復自動車においてソフトウェア開発とAIが統合されることで、車両の所有とメンテナンスの新たな時代への道が開かれつつあります。自己修復自動車は、コストの削減、安全性の向上、環境への影響の最小化といった可能性を秘めており、自動車業界に革命を起こそうとしています。AIとソフトウェアの開発が進むにつれて、自己修復車テクノロジーのさらなるイノベーションと改善が期待できます。道路はすべての人にとってより安全で効率的なものになるでしょう。 

 


著者について

John Makin

Luxoft Automotive、ビジネス戦略およびGTMリーダー

Luxoft Automotiveのシニアディレクターとして、GTM戦略およびビジネス戦略の策定と実施を担当しており、Luxoftのビジョンを「ソフトウェアデファインドビークルへの変革を加速する」と定めました。以前は、複雑なITアウトソーシングに携わる大規模な組織で最高技術責任者を務めており、自動車、政府、公益事業、金融サービス業界の知見と奥深い経験を獲得しました。時間が許せばパワーカイト、フライフィッシング、射撃、模型スタントヘリコプターの飛行を楽しんでいます。

Ronny Kraehe

Luxoft Automotive、コネクテッドモビリティ担当バイスプレジデント

Luxoft Automotiveのバイスプレジデントとして、コネクテッドモビリティと車両データサービス事業を世界的に担当しており、コネクテッドなデータ中心のソフトウェアデファインドビークルのビジョンを、お客様向けのソリューションとして推進しています。以前は、自動車分野の国際的な製品・サービス企業の車両診断事業に関する世界的なデリバリを担当し、業界専門知識を約20年間蓄積してきました。時間が許せばピアノやサッカーを楽しんだり、自宅の庭で次の大きなプロジェクトの構想を練っています。

Ferdinand Arndt

Luxoft Automotive、コネクテッドモビリティ担当チーフテクノロジスト

Luxoft Automotiveのシニアディレクターとして、コネクテッドモビリティと車両データサービス分野のサービスポートフォリオの研究開発、テクノロジーおよびビジネス戦略を担当しています。車両のデジタル化に伴い、車内とクラウドをエンドツーエンドで統合しています。自動車業界で約15年間のキャリアを持ち、ソフトウェアエンジニアからデリバリディレクターまでさまざまな役職を務め、研究から量産に至るまで車両ライフサイクル全体にわたって知見と奥深い経験を獲得しました。時間が許せばマウンテンバイク、セーリング、釣りを楽しんでいます。