「IoT、AI、量子コンピューティングは、今後20年の間に保険業界の姿を変えるでしょう」

保険業界の世界標準化団体であるACORDのCEOであるBill Pieroni氏は、2023年2月に米国で開催されたDXC TechnologyのConnect Insurance Executive Forumで保険会社のエグゼクティブたちへ向けた講演で、上記のような未来のビジョンを示しました。将来に対する同氏の見解は、DXCの委託により保険業界の長期的な見通しを調査したACORDの調査に基づいています。

「私たちは今後20年間の方向性を定め、保険業界の未来を加速しています」と、DXCの保険業界向けソフトウェアおよびビジネスプロセスサービスを代表するRay Augustは、Pieroni氏を紹介する際に述べました。

前述の調査により、保険会社にとって長期的な競争力を獲得するためのカギは「テクノロジーの優位性」、つまりテクノロジーの力をどのように活用するかであることが明らかになったと、Pieroni氏は報告しました。この調査では、回答者の45%が今後20年間の競争力を獲得するためのカギとしてテクノロジーの活用を挙げています。これに対して、直近の競争力のカギとしてテクノロジーの活用を挙げたのは回答者の27%でした。

とはいえ、将来に向けて持続可能な価値創造を実現するためには、保険会社は、テクノロジーの活用だけでなく、顧客/チャネル管理、運営効率の向上、商品開発など、あらゆる対応を同時に行う必要があります。「テクノロジーの活用を推進しなければ、価格は手頃だが品質はそれほどでもない、または品質は素晴らしいが価格は高い、というトレードオフに悩むことになります」とPieroni氏は説明しました。

テクノロジーの優位性

Pieroni氏は、注目すべきテクノロジーのトップ3として、IoT、AI、量子コンピューティングを挙げました。

  • IoT —  今後20年の間に、非常に安価なIoTデバイスの普及が進むことが予想されています。これはつまり、大規模なデータネットワークが出現するということです。労災の申請に影響を与えるウェアラブルデバイスや、エネルギー利用を管理するデバイス、自動車や自宅のセンサーなどを想像してください。収集されたデータにより、実際の活動がほぼリアルタイムで報告されるため、「引受業務と保険金支払の面でとてつもないイノベーションが起こります」とPieroni氏は語りました。「保険というのは、実行に基づくビジネスです。価格を設定して販売し、損失コストを管理します。そして十分な投資利益を得ます」と続けます。「IoTは引受業務と損失コストを変革するでしょう」
  • AI — あらゆるデータの意味を理解する唯一の方法がAIです。AIは、サイバーセキュリティから、顧客や代理店とのコミュニケーション、商品の開発、スマートカーの構成に至るまで、あらゆるものに活用できます。「AIは私たちの物事の進め方を変革します。幸いなことに、まだ少し時間がかかるので私たちには準備する時間がありますが、一部の保険会社はAIに目を向けず、手遅れになる恐れがあります」とPieroni氏は述べました。「将来を見据えた真の経営能力を持つ組織は、AIに対応する能力を構築するでしょう」  
  • 量子コンピューティング — 量子コンピューティングは指数関数的な高速処理を行いますが、これは大量のデータを扱ううえで極めて重要です。従来型コンピューティングにおけるムーアの法則は処理能力が2倍になるという話でしたが、量子コンピューティングでは数千倍の高速化という話になります。たとえばあなたが交通事故に遭ったとします。保険会社は事故があなたの過失ではないことを知っており、損害が発生したことも知っています。エアバッグが膨らむ前に、保険金の請求がすでに送信されています。そして、事故が解決する前に、保険金が口座に入金されるかもしれません。「量子コンピューティングがIoTやAIと融合することで、保険業界に変革がもたらされるでしょう」とPieroni氏は予測しました。

人材の必要性

テクノロジーの重要性が高まるこれからの20年、保険業界はテクノロジー人材を取り込むためにさらなる努力が必要です。「業界として、私たちは高度なスキルを持った人材を十分に採用できていません」とPieroni氏は主張します。人材はすでに主要な優先事項であり、さらに重要になることが予想されます。調査回答者の約70%は、人材の採用、育成、維持が今日の最優先事項であると回答しました。20年後を見ると、この数字は80%にまで増えています。

人材の確保は、問題を解決するためだけでなく、顧客や代理店へのより良いサービスの提供や、より正確な保険料設定などの機会を中心としたイノベーションのためにも重要です。包括的な目標は、生産性の向上と手間のかかる業務の軽減です。

テクノロジー人材のニーズは組織の隅々にまで行き渡ります。Pieroni氏は、経営幹部レベルにとってテクノロジーの専門知識が極めて重要になるだろうと述べています。CIOを務めた経験のあるCEOの需要が高まることが予想されます。「保険業界では、前職がCIOだったCEOは数えるほどしかいません」とPieroni氏は述べ、「そうしたCEOはかなり健闘しています」と付け加えました。

セキュリティの優先度

予想どおり、セキュリティは引き続き極めて重要です。IoTデバイスやデータはすべて、セキュリティリスクを想起させます。調査回答者の多くは、サイバーセキュリティとリスク管理が現在および20年後のテクノロジーの最優先事項であると回答しました。

実際、今後20年の間に保険会社が直面するであろう重大な問題の多くは、今日の問題でもあります。「未来はすでにここにある。ただ均等に行きわたっていないだけだ」と、Pieroni氏はSF作家 William Gibsonの言葉を引用して語りました。未来を現実のものにし、リーダーになるためには、「保険業界は、変化に対してはるかにうまく対処できるようになる必要があります」と同氏は述べました。

 

DXCの委託によるACORDの「Insurance 2040」調査の概要(英語)はこちら からご確認ください。

2023年後半に開催されるDXCのConnect Insurance Executive Forum SingaporeおよびDXC Connect Insurance Executive Forum Sydneyでも、Bill Pieroni氏の講演が予定されています。同氏が語るさらなるインサイトにご注目ください。

DXCが提供する保険業界向けソフトウェアの詳細はこちらをご確認ください。