2025/6/19 by 永井 康章 DXCテクノロジー・ジャパンでは新入社員・新卒社員向けの技術研修として、生成AIを活用したアプリケーション開発の体験研修を実施しました。この研修では、RAG(Retrieval Augmented Generation)を用いたチャットAIアプリの開発を通じて、最新の生成AI技術と開発手法を学びました。 研修の背景 近年、生成AI技術は急速に発展し、ChatGPTやClaude、GitHub Copilotなどのツールが多くの企業で業務に活用されるようになりました。しかし、これらのツールを単に「使う」だけでなく、「どうすればより効果的に活用できるのか」を理解することが、今後のエンジニアには不可欠です。 また、生成AIを組み込んだアプリケーションの開発需要が高まる中、従来のWeb開発スキルに加えて、AIとの連携方法やセキュリティ対策、ユーザー体験の設計など、新たな技術領域への対応力が求められています。 そこでDXCでは、新入社員・新卒社員が早い段階で「AI時代のエンジニア」として成長できるよう、以下の狙いを持って本研修を企画しました。 開発の体験:座学だけでなく、実際に動くアプリケーションを開発する体験基礎的な技術の理解:フロントエンド・バックエンドの関係性の基礎を学習現代的な開発手法の体得:GitHub Copilot、Dev Containerなど、最新の開発ツールに慣れ親しむ この研修を通じて、参加者が「AIツールを適切に活用できるエンジニア」として成長するための第一歩を踏み出せるようにすることを目指しています。 研修で使用した技術 また、アプリケーション開発を通じて、エンジニアとして必要な基礎知識も併せて習得できるように設計しました。具体的には以下の技術要素について学習しました。 フロントエンド技術フロントエンドの特徴や役割 バックエンド技術バックエンドの特徴や役割REST APIの役割 ローカル環境構築WSL・Docker・GitのインストールDev Container による開発環境の自動構築gitコマンドの概要 開発手法・ツールVisual Studio Codeの使い方GitHub Copilot を活用した効率的なコーディング 今回は、その研修の企画と実施を担当した私が、内容の一部をご紹介します。 研修のテーマ:RAGを用いたアプリの開発 今回の研修では、架空のカフェチェーン「DXCカフェ」のメニューや来店客情報を質問できるチャットAIアプリを開発することを目標としました。 技術解説のアプローチ:ファンタジー設定で理解を深める この研修では、複雑な技術概念をより分かりやすく理解してもらうため、ファンタジー要素を取り入れた説明を行いました。チャットAIを「旅人」や「大賢者」に例えたり、開発プロセスを「魔法の道具作り」として表現することで、技術初心者でも直感的に理解できるよう工夫しています。 このアプローチにより、参加者は技術的なハードルを感じることなく、楽しみながら学習を進めることができるように意識しました。 次の項からは、実際にファンタジー要素を取り入れた研修内容の一部を紹介します。 RAG(検索拡張生成)とは? RAGを説明するために非RAGのチャットAI(通常のチャットAI)とRAGを使ったチャットAIの違いを説明します。 まず、通常のチャットAIは「放浪の旅人」のようなものです。旅人の記憶と経験の範囲内でしか回答できないため、最新情報や特定ドメインの詳細な質問には限界があります。 一方、RAGを使ったチャットAIは「大賢者」のような存在です。事前に専門知識を与えることで、より正確で具体的な回答が可能になります。 今回の研修では、Amazon Bedrockを活用してRAGシステムを構築しました。 開発のアプローチ:GitHub Copilotを活用 プログラミング初心者でも参加できるよう、GitHub Copilotを積極的に活用しました。コード補完や説明機能により、効率的に開発を進めることができました。 システムアーキテクチャ 開発は以下の2つのステップで進めました: バックエンド開発(大賢者の弟子の召喚)フロントエンド開発(魔法の水晶玉の用意) バックエンド:セキュアなAPI開発 バックエンドでは、セキュリティを重視したREST API を開発しました。外部からの直接的なアクセスを防ぎ、安全な環境で生成AIとの通信を行います。 適切なセキュリティ対策を施すことで、安全なシステムを構築できます。 フロントエンド:直感的なユーザーインターフェース フロントエンドでは、ユーザーが直感的に操作できるチャットインターフェースを実装しました。 視覚的にわかりやすい画面設計により、スムーズなユーザー体験を提供します。 開発環境:Dev Containerの活用 研修では、Dev Containerを使用したモダンな開発環境を構築しました。これにより、参加者全員が同じ環境で開発できました。 研修の成果と学び この研修を通じて、参加者は以下の技術と概念を習得しました: RAGの基本概念と実装方法フロントエンドとバックエンドの役割分担GitHub Copilotを活用した効率的な開発手法Dev Containerを使ったモダンな開発環境の構築 特に、生成AIを活用した開発の可能性を体験することができたと思います。 DXCの生成AI活用事例 今回ご紹介した研修の基盤には、DXCがお客様のために生成AIの活用促進に取り組んできた実績、そしてそれらを通して培われた知識やスキルがあります。 例えば、DXCでは高速開発と呼ばれる、生成AIを活用した開発メソッドを構築しています。この取り組みにより、従来のシステム開発工数をおおよそ半分にすることを目標にしています。 DXCが高速開発で使用するアプリ開発ツールでの生成AI活用例の一部をご紹介します。 画面とロジックの生成画像、Excel、動画から業務要素を抽出して、複数の新規画面・変更画面・一覧画面・削除画面の自動生成業務シナリオの生成ステップ・バイ・ステップのQA形式による業務シナリオの作成をサポートドキュメント生成手動または生成AIにより作成された業務アプリの画面や処理フローに関するドキュメンテーションをサポート また、高速開発でのテスト自動化やIaCでのインフラ管理でも生成AIツールを活用することで自動化・効率化を図っています。 まとめ 今回の研修では、最新の生成AI技術を使った実践的なアプリケーション開発を体験してもらいました。RAGによる回答精度の向上、GitHub Copilotによる開発効率化、Dev Containerによる環境統一など、現代的な開発手法を総合的に学ぶことができる内容となりました。 これからも弊社では、最新技術をキャッチアップし、実践的なスキルを身につけられる研修を継続して実施していく予定です。 また、高速開発をはじめ生成AIを活用したソリューションの提供にも継続して取り組んでまいります。 About the author 永井 康章 (Yasuaki Nagai) テクノロジーコンサルティング事業部 "Powered by GenAI" コンサルタント ITベンチャー、ITメガベンチャーでソフトウェアエンジニアやSREを経験したのち、生成AIを活用した生産性改善のDXを推進したいと考え2024年にDXCに参画。クラウド技術にも関心があり、Google Cloud Professionalの資格を4種保有している。
永井 康章 (Yasuaki Nagai) テクノロジーコンサルティング事業部 "Powered by GenAI" コンサルタント ITベンチャー、ITメガベンチャーでソフトウェアエンジニアやSREを経験したのち、生成AIを活用した生産性改善のDXを推進したいと考え2024年にDXCに参画。クラウド技術にも関心があり、Google Cloud Professionalの資格を4種保有している。
AWS全認定資格(12種)取得 & Japan AWS All Certifications Engineers選出――そのために、やったこと テクノロジーコンサルタントの鈴木です。2024年3月にAWS全認定資格を取得し、先日、2024 Japan AWS All Certifications Engineersに選出されました。 この選出を機に、同じようにAWS全認定資格取得を目指す方の参考になればと思い、私のAll Certifications Engineersになるまでの道のり、勉強方法などをご紹介します。 続きを読む
実証の取り組みから見えた、生成AIを活用したアプリケーション開発の新たな地平 近年、アプリケーション開発における生成AIの活用に大きな注目が集まっています。DXCテクノロジー・ジャパン(以下、DXC)でも、生成AIを活用した品質と生産性の向上に向けた具体的な取り組みを国内で進めています。一例として、あるお客様と実施したアプリケーション開発における生成AI活用のPoC(概念実証)の内容を中心に紹介します。 続きを読む
ITSMツール導入のベストプラクティス ~最適なツール選択と効果の最大化のために 自社内でITSMツール導入プロジェクトを立ち上げて取り組んだ後に、「高価なシステムを入れたのに、特に何も変わらなかった。見直したい」というような相談がよく寄せられます。なぜ、うまくいかないのでしょうか。これまでITSMツール導入に数多く携わってきた経験をもとに、ベストプラクティスをご紹介します。 続きを読む