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2024/11/13
by 鈴木 徹也 

 

DXC テクノロジー・ジャパン テクノロジーコンサルタント、2024 Japan AWS All Certifications Engineers(※)の鈴木です。

※AWS Partner Network (APN) に参加している会社に所属し、「AWS 認定資格を全て保持している」 AWS エンジニアを対象にした表彰プログラム

AWS(Amazon Web Services)は2024年10月より、新たな資格試験 AWS Certified AI Practitioner(AIF)とAWS Certified Machine Learning Engineer – Associate(MLA)を正式版としてリリースしました。

私は正式版リリース前のベータ版でこの2つを受験し、合格しました。本ブログでは私の合格体験をもとに、速報版として、この2種類の試験の傾向と対策をお話しします。

本試験から、選択肢の並び替え問題や、事例から回答を選択する問題など、これまでのAWSの資格試験にはなかった新しい形式の問題も登場してきました。そのあたりについてもお話しできればと思います。

新試験リリース直後は情報が不足しており不安な面が多いかと思いますので、このブログの内容が少しでも合格を目指す皆さまのお役に立てると幸いです。

※本ブログはベータ版の合格体験に基づいたものとなります。ベータ版の試験は85問と正式版より20問近く出題数が多く、ベータ版を改善された内容が正式版としてリリースされること等、予めご了承ください。

 

2種類の新資格試験

新たにリリースされたのは、以下の2種類の試験です。いずれも、現在のAI の潮流に沿って、機械学習、生成AIに関する内容です。
 

1.AWS Certified AI Practitioner (AIF)

生成AIに関する知識、AWSでいうとAmazon Bedrockを中心としたサービスの理解となります。試験ガイドに記載の通り、特定の職務に関係なくAI/ML、 生成 AI テクノロジー、関連する AWS のサービスとツールに関する総合的な知識が求められます。
 

2.AWS Certified Machine Learning Engineer – Associate (MLA)

機械学習に関する知識、AWSでは Amazon SageMakerを中心としたサービスの理解となります。AIFは生成AIに比重を置いた試験内容ですが、MLAは生成AIの登場以前からあった、従来の機械学習の比重が高い内容に見受けられます。

 

新試験合格のために、これは理解しておこう

上記2試験を通じて、理解しておく必要がある用語をリストします。

※リストの中で、機械学習の用語、生成AIに関する用語、AWSのサービス名称が混在している点はご了承ください。受験直後にリストした単語となるので、比較的試験に出やすいものかと思います。
 

基盤モデル、ファインチューニング、プレコンティニュアストレーニング、大規模言語モデル(LLM)、BERT、トランスフォーマー、マルチモーダル、温度、TOP-P、TOP-K、ハルシネーション、毒性、プロンプトエンジニアリング、重みづけ、過学習、バイアスとバリアンス、オーバーフィッティング、アンダーフィッティング、L1正規化、L2正規化、xGBoostアルゴリズム、LSTM、ゼロショットプロンプティング、フューショットプロンプティング、決定木、MSE、RMSE、F1スコア、正解率、再現率、AUC/ROC、検索拡張生成(RAG)、ヒューマンインザループ、メカニカルターク、データリネージ、Bedrock、 Glue、ETL、Inferiria、SageMaker 各機能

 

SageMaker について

SageMakerは機能が豊富で、覚えるのが大変です。実際の試験でも、どれを選択すればよいのか迷う出題がありました。私は機能を「手だれ=良い仕事をするやつら」として、以下のような表で自己流に整理して覚えました。みなさんも、ご自身の覚えやすい方法を見つけるのがよいかと思います。

(クリックして図を拡大)

役立った教材

今回受験するにあたって有益だった参考書やYouTubeをご紹介します。
 

Microsoft AI-900 試験問題

AWS の試験でありますが、機械学習の基礎学習に役立つのがMicrosoft Learn でのAI-900に関するコースです。私がAI-900を受験したのは3年前、まだ生成AIが今のように注目を集める前でしたが、この時に学んだ機械学習の基礎や分類問題の考え方などは、MLAで出題される機械学習そのものの問題に役立つものでした。

 

生成AIパスポート テキスト&問題集

一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)が実施している生成AIパスポートの問題集です。こちらは、AIFの試験で有益でした。生成AI の基礎的な考え方が理解できます。

本問題集(参考書)の前半は、AIの歴史などAWSの試験には出題されない内容なので、そのあたりはさっと読みます。後半のトランスフォーマー等、生成AIの基礎的な部分は読みやすい内容で、頭に入りやすいです。

 

AWS AI Week For Developers

AWS公式YouTubeチャネルです。チャネルについて「AWS AI Week for Developers では、生成系 AI を中心とした AI 技術の基礎から最新情報、そして開発者視点の活用方法 / 適用事例、ハンズオンなどを通じて、開発者の皆様と AWS がライブセッションを通じて交流できるプログラムをご提供します」と紹介されていますが、この紹介文の通り基礎からわかりやすく理解することができ、AIF受験のための基礎となりました。こちらのチャネルでの勉強は必須です。

 

各試験の押さえるべきポイントとサービス

以上を踏まえ、本年6月にAll AWS Certified Engineers2024に選出されたときの経験と、今回リリースされた新しい2試験、および昨年新試験としてリリースされたAWS Certified Data Engineer -Associate(DEA)も含めて、全15種の試験合格のために抑えるべきポイント・サービスと、“超”個人的難易度を下表に記載します。

(クリックして図を拡大)

また、全15種の試験を受験・合格した感想としては、出題傾向としてAWSのサービス機能が持つちょっとした便利機能(例:Glueのジョブブックマーク)が出やすいと思っています。

あわせて、AWSのサービスはリソースそのもの(Amazon EC2やAmazon S3)と、開発を支援してくれるサービスという形で大きく分類できるかと思いますが、そういったところを意識して整理していくとよいと思います。

 

新しい出題形式

冒頭お話した新しい出題形式ですが、操作手順を並び替えるような問題が新しく出題されました。例えば、Glueや、SageMakerにおけるデータの取込み、分析の手順などについて3、4つの選択肢が提示されて、その順番を並び替える問題です。

また、事例からの出題では、1つのユースケースに対して設問が2、3問出題される形式が出ました。

いずれも、受験経験のある方は、想像できるかと思いますが、Microsoft Azureの試験の出題形式に近い形式だと思います。

 

学習法 

今回の試験で取り組んだ学習方法を3つご紹介します。

1. 自作問題集アプリ

まずは、自作問題集アプリです。これは同僚の、私と同じく2024 AWS All Certified Engineersに選出された陶さんが実践されていた方法です(詳しくは AWS認定資格(12種)をすべて取得したDXC社員2人に聞いてみた──全認定取得の秘訣 )。

陶さんが自作問題集アプリを作ったという話は聞いて驚き、自分には到底できないと思いました。が、ちょうどDXC社内で生成AIを活用したチャットが稼働し始め、であれば、生成AIの試験なのだから、この社内の生成AIチャットを活用し、プロンプトを入力して自作問題集アプリを作ってしまおう、と思いつきました。具体的には、生成AIチャットにHTML、 CSS、 Javaそれぞれのコードを書いてもらい、そのHTMLの中に参考書や問題集から抜き出した設問と選択肢を記入しました。

 

実際に、作った自作問題集アプリは以下になります。

HTML  / CSS / JavaScriptのファイルを1つのフォルダにいれることで、HTMLで記載された設問に対する回答を選択し、送信ボタンを押すとJavaScriptが、正解/不正解を判別した上で、問題に対する解説を表示するものです。「次のページ」「前のページ」「トップページに戻る」などのボタンも追加して、柔軟に設問の間を移動できるようにもしました。

自作問題集アプリ

このHTML  / CSS / JavaScriptを1つのフォルダに格納し、デスクトップに置くだけで完成ですが、せっかくのAWSの資格試験となるので、このフォルダをS3の静的Webサイトホスティングとして機能させたりもしました。これでスマホでも見れたり、通勤中の時間でサクッと勉強することが可能になりました。

大事な文字をCSSで赤文字にし、100均で赤のフィルムシートを買ってきて隠せば、さながら大学受験勉強の時のような「勉強してるぞ!」感も味わえます。

自作問題集アプリ(スマホから)

2. 同僚(仲間)と話す

私が所属するテクノロジーコンサルティング事業部のOneCloud部は、クラウド基盤の構想策定から、移行、構築、運用までを一気通貫で担っており、OneCloudのエンジニアの中には、新試験を同じく受けようとしているメンバーがいました。

一人で勉強することは、時に孤独です。仲間を見つけたら、自分だけ落ちたら恥ずかしいなどと思わず、「いつ試験受ける?俺だめそうだよ」と本音を語りあったり、「このサイトが有益だったよ」と情報交換することで、自分では気づけなかったことを見つけていくとができます。

 

3. 社内学習プラットフォーム&グローバルの情報活用

企業によっては、社内の学習プラットフォームが提供されているかと思います。DXCでもDXC Learningというeラーニングプラットフォームが提供されているので活用しました。

また、DXCのよさは、グローバルで学びの提供の場があり、仲間がいることです。今回の新試験については海外のメンバーが生成AI資格取得のコミュニティを立ち上げていたので私も参加し、先行しているグローバルメンバーの情報を活用しました。

 

最後に

今回3つの上級試験(Data Analytics Specialty / SAP on Specialty / Database Specialty)が廃止され、新たに2種の中級(Data Engineer Associate / Machine Learning Associate)と1種の初級(AI Practitioner)の形態(2024年11月現在)となったAWS認定資格試験では、全資格取得へ挑戦できる環境がより整ったように思います。

クラウドへのリフト&シフト、デジタル人財の育成を企業変革でやるべきと言われて久しいですが、DXCではOneCloud本部のコンサルタントとエンジニアがお客様のクラウドジャーニーにお供し、ビジネスアジリティの強化をご支援しています。あわせて、デジタル人財育成においても資格取得のご支援のみならず、課題抽出のワークショップから、AWS上での実装に至るまでのプロセスを、現場に伺い、お客様毎にカスタマイズした形でご提供します。

文系、営業出身の人間が 2024 AWS All Certified Engineers に選出されたという、私自身の「リスキリングジャーニー」の経験をもとに、泥臭く、現場で、お客様の変革への伴走して参りたいと思います。是非、お声がけください。


About the author

鈴木 徹也  (Tetsuya Suzuki)
テクノロジーコンサルティング事業部
テクノロジーコンサルタント

日系企業でCRMオファリングセールス/コンサルタントとして活躍した後、日本企業の変革をクラウドで推進する役割を担いたいと2023年にDXCに参画。

2024 Japan AWS All Certifications Engineersに選出されている。

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