場所:

日本

オファリング:

Applications, IT Outsourcing

ANAグループにおけるIT事業の中核を担うANAシステムズが、「センターオペレーション改革プロジェクト」で目覚ましい成果をあげている。運用自動化による「No-Ops」の実現を掲げ、人に依存した運用プロセスを見直すとともに、柔軟で変化に適応しやすい運用体制の確立を目指す取り組みだ。DXCテクノロジーは、短期目標として「即効性のあるオペレーションコストの削減」を達成しつつ、中長期の視点で「次世代オペレーション基盤&オペレーションモデルを確立」するプランを提案。グローバルITサービス企業としてのケーパビリティをフルに活用して、ANAシステムズの挑戦をサポートしている。

チャレンジ

  • 大規模化・複雑化が進むシステム環境における、即効性のあるオペレーションコストの削減
  • 運用自動化による「No-Ops」を目指す次世代オペレーション基盤&オペレーションモデルの確立

 

ソリューション

  • ITオペレーションにおけるL1-3サポートをDXCテクノロジーに集約
  • DXC Platform X™を採用し、全システム共通のオペレーション基盤を整備
  • 様々な監視ツールから発生するアラートをRPAおよびITSMツールと連携させ、問題検知から通報、解決までのプロセスを自動化

 

ベネフィット

  • 多様な監視システムが検知した問題を共通オペレーション基盤に集約しつつ解決プロセスを標準化
  • 監視イベントの一次切り分けと自動通知、手順書に基づく対応の自動化を推進
  • セルフサービスポータルを整備しリクエスト管理における迅速化と効率化を実現
  • 属人化した運用を解消し、柔軟で変化に適応しやすい運用体制の確立に向けて大きく前進

快適な空の旅を支える300システムの運用

チケット予約から搭乗までがスマホアプリで完結し、一人ひとりに合った情報がタイムリーに提供されるなど、空の旅を支えるデジタルサービスが目覚ましい進化を遂げている。より快適で利便性の高い顧客体験を実現するために、革新的なアプリケーションが次々とリリースされ、システムはクラウド技術を採り入れながらモダンに生まれ変わりつつある。全日本空輸(以下、ANA)デジタル変革室 サービスプラットフォーム部 ITアーキテクチャチーム リーダーの森下高弘氏は次のように話す。

「デジタル変革室では、ANAが提供する多様なデジタルサービスの開発をリードするとともに、システム面からANAの旅客サービスの信頼性を向上させるミッションを担っています。システム数の増大と複雑化、これに伴う運用負荷の高まりは長年にわたる懸案です。私たちは、自動化による『No-Ops』の実現が信頼性向上の起点になると捉え、ANAシステムズと協力しながらセンターオペレーションの改革に力を注いでいます」

2023年に設立10年を迎えたANAシステムズは、ANAグループにおける中核IT事業会社として、エアラインシステムをはじめとする多様なシステムの開発・運用を担っている。同社が24時間/365日体制で運用するシステムはおよそ300、運用に携わるスタッフは1,000名近くに上る。ANAシステムズで「センターオペレーション改革プロジェクト」をリードする白土和彦氏は次のように話す。

「オンプレミスとパブリッククラウドが混在するANAのシステム環境は、年を追うごとに運用の難易度が増しており、システム単位で運用スタッフを固定して知見を集約しながら安定運用を維持している状況でした。新システムを導入するたびに新たにスタッフをアサインする必要があり、これが直接的にコストの増大に結びついていたことも大きな問題です。私たちは、人に依存した運用プロセスを見直してコスト増を抑えるには、システム運用の自動化による『No-Ops』の実現が欠かせないと考えました」(白土氏)

さらに、2020年から深刻化したコロナ禍により運用スタッフがセンターに出社できない事態となり、センターオペレーションの抜本的な見直しは待ったなしの状況となった。

「変革プロジェクトが掲げた目標は、『即効性のあるオペレーションコスト削減』と『No-Opsを実現する次世代オペレーションの確立』です。DXCテクノロジー・ジャパンは、2つの難題を両立させる画期的な提案を示してくれました」(白土氏)

 

オペレーションコストの削減をいかに実現するか

DXCテクノロジー・ジャパンは、ANAシステムズのITパートナーとして2008年よりインフラ領域における障害対応(L2)、高度な障害対応(L3)のシステム運用実務を担っている。イベント監視、サービスデスクを担う一次対応(L1)担当ベンダーとDXCが連携してシステムの安定運用を支える体制は長年の実績がある。DXCは、ANAシステムズにおけるITサービスマネジメントの標準フレームワーク「ITIL v3」の導入、システム運用プロセスの標準化と定着化にも大きく貢献してきた。同社 テクニカルコンサルタントの伊藤知行氏は次のように話す。

「オペレーションコスト削減に対する私たちの提案は、L1-3までの運用業務をDXCに統合してベンダー間の重複を排除するとともに、一次対応をDXCマレーシアのチームが担うことでトータルコストを大幅に削減するというものです。目の前のコストを着実に減らしながら、これを原資として次世代オペレーション環境の整備に投資していく戦略です」

この提案は、ANAシステムズ、L1担当ベンダー、DXCの3者が2019年からおよそ1年にわたって議論を重ねてきた成果でもある。ANAのビジネス目標を捉えながら、全体最適の視点でITオペレーションのあるべき姿を描き、それぞれの強みを活かせる役割を明確化して新しい協業モデルが練り上げられた。

「さらに私たちは、一次対応プロセスをどこまで自動化できるか、どれだけの省力化が期待できるのか、インシデント管理ツールや自動化ツールを使った検証を共同で進めました。この取り組みは『No-Ops』の実現に向けた大きな布石となりました」(伊藤氏)

 

No-Opsを実現する次世代オペレーション

ANAシステムズは、2つ目のテーマ「No-Opsを実現する次世代オペレーションの確立」に向け、全社システムの共通オペレーション基盤として「DXC Platform X™」を採用した。DXCテクノロジー・ジャパンの小出和裕氏は次のように話す。

「DXC Platform X™は、ServiceNow® IT Service Managementをコントロールプレーンに採用し、DXCのプロフェッショナルによる運用支援サービスとともに提供されるソリューションです。DXCは世界で数多くのシステム運用を手掛けており、DXC Platform X™には長年にわたるITオペレーションの経験と知見が注ぎ込まれています。本プロジェクトでは、ServiceNowによる統合的なITサービスマネジメント/サービスデスク機能を中心に、インシデント管理ツールPagerDuty、RPAツールBlue Prismなどを組み合せて、『No-Ops』を指向した統合的なオペレーション基盤を実現しました」プロジェクトでは、2023年12月よりシステム運用に携わるスタッフと関係者、国内外のDXCチームがITSMダッシュボードの共有を開始。現在、「No-Ops」の実現に向けた機能実装が着実に進められている。

「私たちはITSMツールを導入したのではなく、共通オペレーション基盤と運用支援を『ひとつのサービス』として導入した認識です。DXC Platform X™をフルに活用してシステム運用の標準化を進め、『No-Ops』実現へのステージを着実に上がりながらセンターオペレーション改革を推進していきます」と白土氏は話す。

No-Opsを実現する次世代オペレーション環境

DXC Platform X™の導入を主導しているANAシステムズ 品質技術部 プロセス統括チーム テクニカルマネージャーの西田哲也氏は次のように話す。

「まずシステムの全体像と業務の流れを把握し、ITIL v3標準プロセスを前提に自動化すべき業務を洗い出しました。そして、どの業務に対しどの機能を使って自動化を実現するかを割り当てながら、全体のデザインを精緻化していきました。ポイントは、目先の自動化にとどまることなく、システム全体を見通して最適な自動化プロセスを設計したところにあります」

DXC Platform X™上での機能実装は、イベント管理、オペレーション管理、リクエスト管理の順に進められている。さらに、障害対応の自動化や変更管理などへの展開も計画されている。

「監視イベントに対する一次切り分けと通知の自動化は計画通り実装され、現在は手順書に基づく対応プロセスの自動化に注力しているところです。多くを人手に依存している電話・メールによる問い合わせ対応も、セルフサービスポータルを整備することで自動化を前進させたいと考えています」(西田氏)

自動化の実装に着手しておよそ1年半、オペレーションセンターの運用スタッフが培ってきた知見が徐々に明らかにされ、自動化プロセスの設計図として継承することができたという。

西田氏は、「DXC Platform X™の導入を通じて運用スタッフのノウハウが可視化され、運用の自動化に向けた準備が整ったことは実に大きな成果でした。より柔軟で変化に適応しやすい運用体制の確立に向けて、さらに取り組みを加速させることができます」と話す。

 

プロジェクトのスローガンは「価値協創」

2024年3月末、センターオペレーション改革プロジェクトは、DXC Platform X™の導入とDXCチームによる新しいサポート体制への移行を完了させた。プロジェクトは「即効性のあるオペレーションコストの削減」を短期間で達成する成果を示し、今後は「No-Opsを実現する次世代オペレーション基盤&オペレーションモデルの確立」への取り組みを加速させていくことになる。最前線で奮闘を続ける西田氏は次のように語る。

「プロジェクトを開始するにあたって掲げたスローガンは『価値協創』でした。全体最適の視点でITオペレーションのあるべき姿を描き、ANA、ANAシステムズ、DXCそれぞれが自分たちの役割を果たしながら、力を合わせて新しい価値を作り出していくという考えに立ったものです。3者の誰もが協創された価値を享受できることを目指していきます」

森下氏は、「初めて計画を聞いたときは、そもそも『No-Opsなど実現できるはずがない』と思いました。しかし、プロジェクトが様々な困難を少しずつ乗り越えていく過程で、『本当にできるかもしれない』と考えるようになりました。ANAシステムズとDXCが力を合わせ、強い意思を持ってプロジェクトに臨んでくれていることに感謝します」と話した。

ANAデジタル変革室 担当部長の渡知明氏も、「ANA、ANAシステムズ、DXCのチームワークは素晴らしいと思っています。3者が協力してより良いオペレーション環境を実現し、より合理的なオペレーションを実践することで、より大きな『価値協創』が可能になると確信しています」と続けた。

白土氏は、「最初にDXCからの提案を受けたとき、『本当にできますか』と問い直したのをハッキリと覚えている」と笑顔を見せつつ次のように結んだ。

「長年こだわり続けてきたITオペレーションの体制、手順、プロセスを見直し、私たちは自動化と『No-Ops』に向けて大きく舵を切ることができました。ビジネス環境がどのように変化していくのか、システムへの要求はどう変わるのか予測が難しい中、あらゆる変化に柔軟に適応できる体制が整えられたと考えています。DXCには『価値協創』の思いを共有したパートナーとして、継続的にセンターオペレーション改革をサポートしてもらえることを期待しています」

 

Blue Prismは、Blue Prism Limitedおよびその関連会社の商標または登録商標です。
PagerDutyはPagerDuty Inc.の米国およびその他の国における登録商標または商標です。
ServiceNowおよび関連する製品名称は米国および/またはその他の国におけるServiceNow, Inc.の商標または登録商標です。

そのほかのお客様事例

アイテムを更新しています。