第一三共が、2030年ビジョン『サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー』の実現に向けて、成長戦略を加速させている。医療用医薬品の世界規模での開発競争が激しさを増す中、よりスピード感のある意思決定と事業推進を実現するために「データと先進デジタル技術」を最大限に活用した変革が進む。DXCテクノロジーは、第一三共のデジタル変革を主導する戦略組織のパートナーとして、ServiceNowによるグローバルDXプラットフォームの整備と活用を包括的にサポートしている。
ベネフィット
先進的グローバルヘルスケアカンパニーへの変革に挑む
医療用医薬品で国内トップシェアを誇る第一三共が、「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」としての存在感を急速に高めている。抗体薬物複合体(ADC)に代表されるがん治療薬が、同社のグローバルな成長を加速させる原動力である。その成長をデータとデジタル技術で支えるDX企画部のミッションについて、同部部長として第一三共のDX戦略をリードする上杉康夫氏は次のように話す。
「第一三共は、2030年ビジョンとして『サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー』を目指すと宣言しました。DX企画部は、その実現を支える戦略組織として社内外のスペシャリストを集結して2020年に新設されたチームです。私たちの重要なミッションのひとつに、グローバル共通のDXプラットフォームの整備があります。データとデジタル技術をフルに活用し、スピード感のある意思決定と事業推進を支え、グローバルでの成長戦略を加速させていきます」
データ駆動型経営の実現、先進デジタル技術による業務変革、グローバルマネジメント体制の強化――先進的グローバルヘルスケアカンパニーを指向する第一三共のDXへのチャレンジは広範に及ぶ。
「チーフデジタルトランスフォーメーションオフィサー(CDXO)のもと、2020年度に日米欧のDXに関連するデータおよびデジタル活用に関する機能が集約されるとともに、2023年度にはHealthcare as a Serviceを推進する機能を新設し、グローバルDXとして一丸となって変革を進めています。DX企画部は、戦略企画とその実行管理を担うとともに、様々な施策を通じて第一三共のグローバルでのデータとデジタル技術の活用を支えています」(上杉氏)
ServiceNow活用の高度化をいかに実現するか
医療用医薬品の開発競争が激しさを増す中、第一三共はグローバル研究開発体制の強化に力を注いでいる。研究開発を支える業務プロセスはグローバル横断的な形にシフトし、それを支えるアプリケーションもいち早くグローバル化が進んできた。DX企画部 DX企画グループ 主幹の山光由佳氏は次のように話す。
「グローバルアプリケーションのサービス品質を向上させるために、2016年にServiceNow IT Service Management (以下ITSM)をグローバルワンインスタンスで導入し活用してきました。ITサービス管理やヘルプデスクにかかる業務プロセスとツールを標準化するための、共通の運用基盤を整備することが当初の目的でした。現在では、リージョン固有の環境を含めおよそ450のアプリケーションやサービスを運用し、約1,200名のITスタッフがServiceNow ITSMを活用しています」
ServiceNow ITSMがグローバル共通基盤として定着し、これを利用する国々や管理対象が増大していく過程では、運用やメンテナンスに関わる社員の業務負荷も高まっていった。
「より大きな役割を担うようになったServiceNow ITSMをより良い形で運用し、グローバルで活用の成果を高めていくための新しい支援チームが必要でした。そこで私たちは、2020年にServiceNow ITSMのグローバルメンテナンスパートナーとしてDXCテクノロジーを選定しました」(山光氏)
ServiceNow Global Elite Partnerならではの支援体制
DXCテクノロジーは、世界に7社(2023年12月時点)しかないServiceNow Global Elite Partnerの1社であり、アドバイザリー、システム開発、マネージドサービスを通じてグローバルで1,000社以上の顧客企業にServiceNowのソリューションを提供している。独自のServiceNow運用モデル「グローバル AMS」には、インシデント、変更、改善など、ベストプラクティスに基づく標準プロセスが体系化されている。ServiceNow Practice Directorとしてプロジェクトに参画するDXCテクノロジー・ジャパンの立花俊樹氏は次のように話す。
「私たちの提案の中核は、第一三共様(日本・本社)をDXCテクノロジー・ジャパンが中核となってサポートしつつ、アメリカ、ドイツ、ベトナム、南アフリカのDXCチームも連携して、グローバル3極(日米欧)を支えていく体制でした。グローバルでの品質管理を日本・本社が担いながら、3リージョンそれぞれの課題は現地のサービスマネージャー主導で迅速に解決できることがポイントです」
ServiceNow ITSMのグローバル運用に求められる「適切なスキルとリソース」を、「適切な場所」から、「適切なコスト」で提供するために、DXCのグローバルケーパビリティが最大限に活かされている。DX企画部 DX企画グループ グループ長の上野哲広氏は次のように話す。
「リージョンが協調してグローバルとしてDXを推進することが私たちの目的です。グローバルメンテナンスパートナーに求めたのは、標準化されたルール・手順に則ったServiceNow ITSMの活用・運用を通じて、16,500ユーザーが使うグローバルなIT環境の適切な品質管理とガバナンスを実現することでした。各リージョンにDXCのエキスパートが常駐し、グローバルAMSの標準に基づいて各拠点のチームが連携して支援するという提案は、私たちが描いていた理想にかなり近いと感じました。何より、グローバルメンテナンスにおける豊富な経験と実行力を高く評価しました」
「DXCは、向こう3年間を見通して何をどのように改善していくべきかを具体的に示してくれました。ServiceNowの環境をメンテナンスするだけではなく、プロアクティブかつ継続的に改善に取り組む考え方にも共感しました」と上杉氏は話す。
第一三共がServiceNow ITSMを「グローバルワンインスタンス」で導入した狙いは、ITガバナンスの強化にある。ローカルアプリケーションやワークフローの開発など、リージョン固有のニーズにはどのように対応するのか。
「基本はFit to Standard=標準機能の活用です。リージョンから強い要望があったとしても、グローバル共通のプラットフォームとしての運用に影響を及ぼすような事態は回避しなければなりません。『DXの推進』という共通のゴールを見据えながら、3極で慎重に検討を重ねて着地点を見出していく必要があります。カスタマイズ範囲を見極めるような場面で技術的なトラブルが発生しないよう、DXCチームにはガバナンスの『最後の砦』としての役割も担ってもらっています」(山光氏)
IT投資管理からOperational Excellenceプロジェクトへ
2020年、DX企画部の編成とともにグローバルでの『IT投資管理』への取り組みが始まった。上野氏は次のように話す。
「DX企画部には、事業戦略と合致したIT投資を見極めるというミッションがあります。そのためには、各リージョンから示された予算要求の合理性を中長期のビジネス戦略と照らし合わせながら定量的に評価し、ITプロジェクトを適切に管理していくことが不可欠です。従来Excelで行っていたこの業務をより高度化・効率化するために、ServiceNow Strategic Portfolio Management(以下SPM)を採用しました。SPMによって、各リージョンから収集したDX化の要望の内容を、グローバルでDXメンバーが協力して精査することが可能になり、さらにDX内で同時に動いているプロジェクトのポートフォリオが可視化されました」
IT投資を適切に評価するための検討事項は広範囲に及ぶ。合意形成が必要なステークホルダーも多い。DX企画部では、予算管理とプロジェクト執行管理のために単年度の想定で導入したServiceNow SPMの効果を確認し、グローバル共通のDXプラットフォームに格上げするとともに新たなプロジェクトを立ち上げた。
「ビジネス戦略に合致させながらIT投資計画を精緻化していくには、現状のIT資産とライフサイクルを正確に把握することが欠かせません。新たに開始した『Operational Excellenceプログラム』(以下OEプログラム)では、DX企画部自身のマネジメント業務をデータ駆動型にするために、ServiceNow構成管理データベース(CMDB)の整備に着手し、Application Portfolio Management(APM)の導入も視野にいれながら、SPMや他のシステムがこれらの情報を相互に利活用できるよう、複数のプロジェクトをひとつのOEプログラムとして動かすことにしました」(上野氏)
2023年に開始されたOEプログラムをリードするDX企画部 DX企画グループ Directorのジャンセン アレクサンダー氏は次のように話す。
「本プログラムでは、グローバルでの予算管理と資産管理、事業戦略と投資計画の評価まで一貫したプロセスを確立し、ビジネスの競争力に結びつく戦略的なIT投資管理を目指します。CMDBによるデータ基盤の整備・拡充はDX推進の基礎をなすものであり、私たちが特に重視した要件です。これらの一貫した活動を通じて、適切なアプリケーションポートフォリオを確立し、世界中のユーザーにより良い体験を提供することが私たちの目標です」
「多様な資産情報を集約するデータ基盤だからこそ、SPM導入時からTransparency=情報の透明性を重視している」(山光氏)というCMDBは、Common Service Data Model(CSDM)と呼ばれるServiceNowの標準データモデルに基づいて構築されている。CMDBはServiceNowならびに、関連するプラットフォームを含む様々なプロセスと密接に関わるため、ここでもFit to Standardが重要になる。DXCの立花氏は次のように話す。
「OEプログラムに参画するにあたり、DXCがグローバルに構成するServiceNow 戦略ビジネスグループからエキスパートをアサインしチームを強化しています。ServiceNowによる投資管理(SPM)、アプリケーションポートフォリオ管理(APM)、構成管理(CMDB)における世界トップクラスの知見を活かし、さまざまな要求とガバナンスを両立させるためにFit to Standardを推進していく考えです」
「DX for DX」によるデータ駆動型マネジメントの実現
第一三共では、「ServiceNowの更なるグローバル展開」「Operational Excellenceによる運用高度化」という縦横2軸でグローバルDXプラットフォームの活用を進めている。上野氏は次のように話す。
「OEプログラムは、DX企画部がデータ駆動型のマネジメント体制を確立するための大きな一歩です。DX企画部自身のDXへのチャレンジである『DX for DX』が可能なのは、ServiceNowを常に快適に利用できるからであり、これを適切に運用するDXCの支援があってこそ。私たちがグローバルでデータ駆動型の仕事を推進していくために、DXCは欠かせないパートナーとなりました」
運用開始後、プロジェクトニーズの拡大を受けて、インドとオーストラリアのDXCチームが参画した。さらに直近では、中国とブラジルでのServiceNow展開計画に向けて中国チームも加わり、8カ国からDXCチームが参画している。「各リージョンでのServiceNow活用はさらに拡大していくので、グローバルでの支援体制に強みを持つDXCへの期待もさらに大きくなる」と山光氏は期待を示す。
第一三共のDXは、自社の変革にとどまらず、様々なパートナーを巻き込んだ「トータルケアエコシステムの実現」という社会変革までも視野に入れている。グローバル共通のDXプラットフォームが担う役割は大きい。上杉氏は次のように結んだ。
「第一三共がグローバルでの成長戦略を推進していくうえで、データ駆動型の意思決定と事業推進の強化は必須です。グローバル共通のDXプラットフォームのパフォーマンスを最大まで高めるために、DXCのグローバルケーパビリティと、ServiceNowエキスパートとしての働きに大いに期待しています。これからも、第一三共のパートナーとして様々なチャレンジに一緒に立ち向かってもらえることを願っています」