銀行は現在、規制当局、従業員、さらには顧客などのさまざまな利害関係者から、持続可能な銀行業に向けた取り組みを求める圧力を受けています。ポートフォリオの脱炭素化や、再生可能エネルギー企業などへの投融資支援に加えて、企業への融資の承認時に持続可能性の向上を義務付けることや、グリーンプロジェクトを支援することは、銀行にとってますます重要になっています。 

銀行は設備投資を介して世界経済を活性化しており、銀行の投資先の選択が持続可能性の成功に影響を及ぼします。テクノロジーとデジタルプラットフォームは、銀行業におけるアプリケーションの持続可能性を実現するための真の原動力となる可能性があり、持続可能な銀行業の実現という最終目標に貢献します。

持続可能な銀行業の実現には、銀行業務と事業活動の戦略的な計画と実行が必要であると同時に、環境、社会、ガバナンス (ESG) の取り組みへの影響を考慮する必要があります。銀行セクターでは、社会的責任とガバナンスへの取り組みは以前から行われていますが、環境への取り組みが不十分でした。 

持続可能な銀行業の基盤

国連の持続可能な開発目標 (SDGs)、そして世界共通の目標と責任銀行原則などの取り組みは、銀行が持続可能な銀行業を目指すうえでの基盤になっています。

投融資決定に係る企業戦略、商品/サービスを決定するプロセスに持続可能性の原則を組み込むことで、銀行は環境への影響に配慮したプロジェクトの推進や企業の支援において影響力を発揮することができます。銀行は、実店舗や社屋から、ATMコーナーや現金輸送のプロセスに至るまで、幅広い領域で環境にプラスの影響を与えることができます。責任銀行原則を採用することで、銀行は持続可能な開発目標やパリ協定、および関連する国や地域の枠組みで表明されている目標に合致し、貢献するようにビジネス戦略を整合させることに注力しています。また、中央銀行や資本市場の規制当局がデータの収集、分析、利用、発信方法に関して重要な議論を提起し続ける中、金融機関は、ESG/CSRレポートや、可視化、モデリング、産業化、自動化によってデータを開示し、持続可能性の成果と影響を評価・報告するための措置を講じています。 

デジタルプラットフォームは、排出量ネットゼロやエネルギー効率など、銀行業務における持続可能性の優先事項への対応を促進し、社会親善に向けた機運の構築とブランドの強化に貢献することができます。 

テクノロジーとデジタルプラットフォームによるサポート

ESG要件への対応は、もはや法規制やコンプライアンス基準だけの問題ではなく、デジタルネイティブで持続可能性を重視する顧客基盤の共感を呼ぶ商品を生み出すことにもつながります。

デジタルプラットフォームは、排出量ネットゼロやエネルギー効率など、銀行業務における持続可能性の優先事項への対応を促進し、社会親善に向けた機運の構築とブランドの強化に貢献することができます。ブロックチェーン、ビッグデータ、人工知能 (AI)、機械学習 (ML)、自然言語処理 (NLP)、ロボットによるプロセス自動化 (RPA)、光学文字認識 (OCR)、クラウドコンピューティング、モノのインターネット (IoT)、量子コンピューティングなどのテクノロジーは、競争力を向上させる持続可能な銀行業を実現するための金融業務プロセスと商品の設計の段階に入っている銀行にとって、無限の可能性を生み出しています。

たとえば、ML、OCR、NLP、APIを統合することで、電子文書をスキャン、抽出、分類し、インテリジェントにアップロード、共有、保存できるようにする銀行の融資案件の組成のためのデジタルプラットフォーム開発が促進されます。ペーパーレスバンキングは、排出量ネットゼロの目標達成への取り組みをサポートします。

多くの銀行は、エネルギー効率を高めるためにグリーンクラウドコンピューティングインフラストラクチャを採用しつつあります。グリーンボンド管理プラットフォームは、ブロックチェーン、IoT、ビッグデータ、ML、NLPを活用して、支出に応じて排出量を相殺することで気候変動の影響を軽減したり環境を保護したりするプロジェクトへの資金調達をサポートします。また、グリーン認証コストの削減、SME(中小企業)向け金融市場のグリーン信用格付システムの改善、グリーンプロジェクトの評価・分類力の向上など、革新的な手法を開発することにより、銀行はグリーンファイナンスを可能にしつつあります。

コーディングにおいてアプリケーションの持続可能性を構築することは、もはや非機能の要件です。したがって、アプリケーション設計の選択、適切なテクノロジーインフラストラクチャ、オープンでコンポーネント化されたアプリケーションアーキテクチャー、アプリケーションのパフォーマンスを監視するための最新のテクノロジーとツールの実装などが、エネルギー消費と持続可能性の観点から重要です。これらを利用することで、銀行は事業がどの程度効率的に運営されているかを判断できます。

ワークロードをクラウドに移行し、エネルギー消費量の少ない端末機器を使用することに加えて、二酸化炭素排出量の監視およびレポートツールを導入することは、持続可能なインフラストラクチャにとって不可欠です。

銀行は、より効率的なエネルギー利用を目指して、スマートなDevOpsプロセスを導入してソフトウェアを継続的に最適化したり、最適化されたDevOpsパイプラインを構築したりするなどの対策を取ることにより、アプリケーションの持続可能性への取り組みをサポートすることもできます。ワークロードをクラウドに移行し、エネルギー消費量の少ない端末機器を使用することに加えて、二酸化炭素排出量の監視およびレポートツールを導入することも、持続可能なインフラストラクチャにとって不可欠です。ワークロードが再生可能エネルギーや低炭素エネルギーによって処理される可能性の高いデータセンターを所有するクラウドサービスプロバイダーを利用することで、持続可能なワークロードとデータ利用の目標がサポートされます。

銀行が社内業務と社外事業における環境への取り組みを推進する上で、その技術力を発揮する機会はこの他にも多くあります。環境に配慮する競合他行が増えるなか、大胆な行動を起こすのにゆっくり待っている時間はありません。

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著者について

Sushil Yadav
DXCアプリケーションサービスのプリセールスおよびソリューションアーキテクト。公認証券アナリスト、TOGAFエンタープライズアーキテクトおよびAWSソリューションアーキテクト - アソシエイトであり、ITSMおよびPMP認定を取得しています。銀行、金融サービス、保険の分野でのソリューション開発と提供において、ITコンサルティングおよび金融商品組織で23年の経験があります。