ディシジョンインテリジェンス:AI時代において成功するために
AIによるマジックの第一歩は、ビジネス目標の明確化
2024/9/20
明確なビジネス目標を確認せずにAIを導入すると、何をやろうとしているのかを伝えないまま披露された手品のようになってしまいます。
「お好きなカードを選んでください」と、マジシャンはカードをシャッフルしながら言います。「そのカードを覚えてから、山札に戻してください」と指示をしたあと、再びシャッフルします。そしてカードを1枚抜き出し、「あなたが選んだカードはこれですか」と尋ねます。もちろん正解で、観客は大喜びです。
さて今度は、同じカードマジックでも、意思疎通が図られないまま披露された状況を想像してみてください。マジシャンは、カードを無言でシャッフルします。そして、無言のまま観客にカードを見せます。誰かにカードを選んでもらおうとしますが、無言のままでは、もちろんうまくいきません。
同様のことが、明確なビジネス目標について合意がないままAIを導入する場合にも起こります。テクノロジーを導入しさえすればよいという考えで新しいテクノロジーを持ち込んでも、うまくはいかないのです。
AIを導入するには、組織は大規模なAIインフラストラクチャを構築(またはレンタル)し、AIに対する豊富な知識を持つ従業員を採用して研修を行ってから、データが豊富なAIモデルを作成してシステムをトレーニングする必要があります。ビジネス目標が定義されていなければ、これらのリソースの多くが無駄になる恐れがあります。
実際に、そのような状況を頻繁に目にします。多くの企業がAIに投資していますが、その大半が希望した成果を達成できていません。このことは、次のデータに示されています。
- AIセンターオブエクセレンス(横断的に組織する専門チーム)に関するプロジェクトの60%が、投資収益率の目標を達成できなかったことで1年以内に中止されている1
- AIを利用したリモートオペレーションセンターに関するプロジェクトの90%が、想定よりも多くの人間による介入を必要としている2
- 「ビッグブラザー」と形容されるAIプロジェクト(利便性や開発者の利益を優先した大規模プロジェクト)の70%は、倫理的に問題があるだけでなく、意図したサイクルタイムでの改善を実現していない3
AI時代において成功するには、明確な目標が必要です。目標があって初めて、「継続的なディシジョンインテリジェンス」を推進できます。
好ましい連鎖反応
ディシジョンインテリジェンスを活用している組織は、ビジネス上の問題解決に役立つ実用的なデータを従業員に提供できます。AI導入において優れている組織は、必要なモデルを構築するために必要なデータセットだけを確実に保持しています。すべてのデータが良いデータというわけではなく、データが多いほど良いとは限らないからです。
ビジネス目標を念頭に置いている組織がAIを効果的に導入することで、継続的なディシジョンインテリジェンスに好ましい連鎖反応が発生します。この連鎖反応がどのように進むか、例を挙げます。
- X社は、AIデータを使用して適切な意思決定を行い、優れたビジネス成果を実現した
- 高い利益を得たことで、X社はAIのイノベーションにさらに投資することが可能になった
- これらのAIイノベーションにより、X社はさらにデータ主導の意思決定を行い、好調なビジネス成果を引き続き促進することで、カスタマーエクスペリエンスが向上し、競争上の優位性を獲得した
- そして、同様の効果が繰り返される
お客様の実例
ここでは、DXC Technologyのお客様の中から、AIの活用によって明確な目標を達成している組織の例をご紹介します。
- 中国に拠点を置くライフサイエンス企業は、AIによって強化したインテリジェントな重要業績評価指標をガバナンスに組み込むことで、ビジネスを推進しています。このAIソリューションは、まず複数のソースからエッジツーコアのデータを取得して合成し、次にそのデータに分析を加えてインサイトに変換することで、データ主導型の意思決定を可能にしています。その結果、同社は臨床試験プロセスの改善とイノベーションの迅速化という目標を達成し、新薬を待つ患者のための開発に引き続き取り組んでいます
- オーストラリアの統合サービスプロバイダーは、データをより戦略的に活用して、より良い意思決定を行うための情報提供と支援を行いたいと考えていました。クラウド分析とAIプラットフォームは、最新のデータウェアハウスおよびレポートソリューションを提供することで、データへのアクセスと整合性の向上を図り、企業の成長に不可欠なキャパシティを拡大する基盤を提供しています。より優れたインサイトにより、より良い意思決定を組織全体で推進しています
- 航空機の整備、修理、オーバーホールサービスを提供するドイツのプロバイダーは、販売見積もりを迅速かつ正確に行うために、整備中に発生する可能性のある潜在的な不具合を予測する必要がありました。AI主導のソリューションは、従業員が自分で処理するには大きすぎるデータセットに対応し、不具合を解決するために必要なツールや、時間、労力を見積もる上で重要な役割を果たしています。最終的には、顧客サービスの向上や、スマートなサプライチェーンの推進に役立っています
これらの例に共通しているのは、ビジネス目標と期待する着地点が明確だということです。これが、求めている結果の実現につながっています。
優れたカードマジックと同様に、必要な成果を得る秘訣は「細部まで手を抜かない」ことにあります。
まとめ
AIは、組織のあらゆる側面を再構築できる変革の原動力になります。そして、DXC Technologyのお客様が成功を収めている背景には、ビジネスのあらゆる側面でAIの活用を可能とする手腕が存在しています。
DXCは200社以上のフォーチュン500の企業に対し、AI時代の複雑な状況を乗り越えるための支援を行っています。その中心となっているのが、50,000人を超えるエンジニアとコンサルタントを擁する当社のグローバルチームであり、お客様から信頼されるAIサービスとソリューションを提供しています。
参考資料