自動車業界に影響をもたらす環境・社会・ガバナンス(ESG)規制が増え続け、自動車メーカーとそのサプライヤーは対応を余儀なくされています。

これらの規制は多岐にわたり、次のような事柄に関する規則があります。

  • 使用済み自動車(ELV)
  • リサイクル性
  • 材料のコンプライアンス
  • 紛争鉱物
  • サプライチェーンの社会的要因
  • 持続可能性
  • 循環型経済
  • デジタル製品パスポート(近日施行予定)

このような規制への対応は深刻な課題ですが、一方でテクノロジー企業による心強い支援も利用可能になっています。DXC Technologyは、高度なソリューションを取り揃え、自動車メーカーのESG規制へのコンプライアンスを支援しています。代表的なソリューションが、自動車業界をリードするマテリアルデータシステムであるIMDS(International Material Data Systems)です。

IMDSについて

IMDSは現在、世界中の12万社を超える自動車部品サプライヤーの20万人以上の従業員によって利用されています。この大規模なコミュニティから得られるデータは、サプライチェーン全体で一貫した報告を行うための基盤として機能しています。たとえば、EUのREACH規則(化学物質の特性と危険性に関する情報の収集と評価の手順が規定されています)に示されている高懸念物質(SVHC)への対応が可能です。

常に最新であり続けるために、IMDSは継続的に更新によって新しい革新的な機能を備えています。たとえば、IMDS Advanced Accelerator(IMDS-a2)では、材料が数多くの規制に準拠していることを分析して確認するための40項目以上のチェックが可能です。また、a2の専用の分析およびレポート作成モジュールにより、自動車メーカーはインメモリデータベースとビッグデータテクノロジーを利用して自社のIMDSデータを分析できます。

もう1つの高度なソリューションであるIMDS Advanced Interface(IMDS-AI)を利用すると、自動車メーカーはサプライヤーや顧客とのIMDS情報のやり取りを、ローカルのプロセスやシステムに統合して行うことが可能になります。同ソリューションのダウンロード機能により、メーカーはIMDSから社内システムにデータを転送できます。

IMDSの新しい機能である製品カーボンフットプリント(PCF: product carbon footprint)は現在開発中ですが、2024中にサービスを開始する予定です。この機能では、サプライチェーン全体からすべての材料とコンポーネントのPCF値が収集されます。たとえば、IMDSでこの機能を利用すると、中国製のアルミニウムとスカンジナビア製のアルミニウムの総カーボンフットプリントを比較し、どちらがより持続可能かを判断して選択できるようになります。長期的には、この機能はさらに拡張され、総環境フットプリントもわかるようになる予定です。

材料について

IMDSの大きなメリットの1つは、すべての化学物質についてのフルマテリアルデクラレーションを作成できることです。同時に、IMDSは、メーカーが報告義務の順守と機密情報の保護のバランスをとることも可能にしています。Global Automotive Declarable Substance List(GADSL)に示されている化学物質でなければ、重量比により全体の10%を超えない範囲で、企業が機密情報としてマークした非有害化学物質を除外することが可能です。

また、IMDSのマテリアルデータシートは特定の規制と関連付けずに蓄積されるため、IMDSで収集された情報は、複数の規制準拠にも利用できます。基本的に、「一度の収集で、さまざまな用途に使える」ようになっています。

たとえば、企業がELVのレポート作成のためにIMDS経由でデータを収集した場合、後でそのデータをバッテリーパスポート(EUの新しいバッテリー規則、またはREACH規則に準拠するために必要な全情報を含む、バッテリーのデジタル記録)に再利用できます。対照的に、専用の材料情報収集プラットフォームの多くは、単一の規制のみを対象にしています。これは、新しい規制に対してだけでなく、既存の規制に改正があった場合でも、何らかの新しい調査を開始する必要があるということです。

IMDSは、間近に迫ったデジタル製品パスポート(DPP)に対する準備についても自動車メーカーを支援できます。欧州委員会の提案のとおり、DPPは原材料の抽出、生産、リサイクルに関するデータも含めて、製品情報をバリューチェーン全体で共有することになっています。IMDSを利用することで、企業は生産とリサイクルの効率の実際の影響を計算し、DPPに備えることができます。

自動車業界以外の耐久財メーカーもIMDSのメリットを活用できるように、DXCはCompliance Data eXchange(CDX)でシステムを拡張しました。SaaSベースの同ソリューションは、主に自動車業界以外で製品データ管理やサプライチェーンの情報伝達に利用されています。耐久財メーカーは、CDXを利用して自社の製品の安全性、コンプライアンス、持続可能性を評価できます。

もちろん、CDXは自動車メーカーも利用できます。自動車メーカーにとって、CDXは追加ソリューションとして機能し、アクセサリや関連製品など、車両の一部ではない製品に使用されている材料のコンプライアンス対応に利用できます。

IMDSのレポート作成機能を拡張するために、DXCはMaCS(Material Collector System)を開発しました。自動車メーカーが製品を設計する際にリサイクル性と再利用性の指標を最大化し、環境フットプリントを最小限に抑えることを可能にするための、SaaSプラットフォーム上で動作するツールです。また、IMDSと同様に、MaCSは継続的に更新、拡張されています。

自動車メーカーはMaCSを使用することで、関連するマテリアルデータシートに記載されている各サプライヤーの部品の構成を、通常はOEMのBoM(部品表: Bill of Materials)に記載される最終製品の構成と関連付けることができます。また、自動車メーカーはMaCSを利用してさまざまなバージョンのBoMをテストし、環境への影響が最も少ないと考えられるバージョンを見つけ出すこともできます。

他の業界では、MaCSを利用して自動車以外の製品を管理することで、メーカーがCDXを通じてサプライチェーンから材料情報を収集する方針であると示すことができます。

DXCの専門知識をご活用ください

DXCは、自動車メーカーやその他の耐久財メーカーが務付けられている最新のESG規則や要件への対応をご支援いたします。関連するサービスは複数ありますが、メーカーのファイアウォール内外に存在するシステムとデータを接続するためのシステム統合を起点として、お客様のニーズに沿ったサービスやソリューションをご提供します。

DXCの自動車業界向けサービスDXCアナリティクス&エンジニアリングの詳細をご確認ください。また、ご不明の点などについてはお気軽にお問合せ下さい。

著者について

Giuseppe Marengon: DXC Technology Italyの自動車および製造コンサルティングマネージャー。製造業界で30年以上の運用、コンサルティング、調達の経験があり、世界クラスのITソリューションプロバイダー数社でのさまざまな役職で経験を積んでいます。2022年よりDXC MaCS Practiceを主導し、循環型経済ループの完成を目指すメーカーをサポートしています。

Giuseppe Marengon: DXC Technology Italyの自動車および製造コンサルティングマネージャー。製造業界で30年以上の運用、コンサルティング、調達の経験があり、世界クラスのITソリューションプロバイダー数社でのさまざまな役職で経験を積んでいます。2022年よりDXC MaCS Practiceを主導し、循環型経済ループの完成を目指すメーカーをサポートしています。

Thomas Fruehbuss: 2012年よりDXCのIMDSおよびCDX担当アカウントビジネスエグゼクティブ。これらのサービスについて、増え続ける規制要件や機能要件に対処し、適応作業と機能強化を継続的に管理しています。お客様とパートナーの関係管理、商業的なテーマ、戦略的な製品開発、IMDSとCDXの販売に専念しています。2004年からDXC(旧Hewlett Packard Enterprise Services)に勤務し、製鉄業界と自動車業界を専門としています。