2023/1/26
by Marek Jersak, Frank Kirschke-biller, Andreas Lindenthal from Luxoft
※本稿はDXC Technologyのグループ企業であるLuxoftの記事を翻訳したものです。出典:Decoupling hardware and software timelines to shorten the development cycle
ソフトウェアデファインドビークル (SDV) の登場により、自動車用ソフトウェアの複雑さが増し、これまでより短い開発期間でより多くの機能を完成させることが求められるようになってきています。
その結果、ほとんどの自動車メーカーは、ハードウェアとソフトウェアの開発を分離することで、開発期間の短縮を図り、生産スピードを上げ、最終的にビジネス全体の経済効率の向上を目指しています。最も一般的な取り組みとしては、開発ライフサイクルの早い段階での試験開始や、試験環境における柔軟性と拡張性を向上させるための仮想化の強化などがあげられます。ハードウェアとソフトウェアの分離は今後さらに進む可能性があると予想されており、そうなっていけば、ウォーターフォール方式の自動車製品開発プロセスからの移行が必要になります。Luxoft は、SDVへの移行を通じて変革を成し遂げようとしている自動車メーカーを支援しています。自動車に関する広範な知識とソフトウェア開発に関する専門技術や知識を独自に併せ持つLuxoftは、ハードウェアとソフトウェアの分離範囲を拡大し、開発効率を最大化させたいと考えている自動車メーカーにとって理想的なパ-トナーです。
今後の方向性
ソフトウェアとハードウェアの分離とは、ハードウェアの依存関係をソフトウェア開発プロセスから切り離すことを意味し、切り離すことによって製品開発期間を短縮できるようになります。これは、進捗速度が異なるソフトウェアとハードウェアの2つの並行する開発プロセスを確立することによって実現します。ハードウェアとソフトウェアを分離するレイヤーは複数あり、それぞれから得られるメリットもまちまちです。そうしたメリットを、一つずつ考慮しておく必要があります。
- オペレーティングシステム (OS) の抽象化レイヤーでは、仮想環境を導入することで、OSを基盤となるハードウェアアーキテクチャーから切り離します。この仮想環境は、ソフトウェアによって使用および定義される必要なハードウェア/ソフトウェア・インタフェースと機能を提供します。この抽象化技術は、例えば、ECUのハードウェアとソフトウェアの分離に使用され、ソフトウェア開発とソフトウェア試験を物理ECUハードウェアから切り離すことを可能にします。ほとんどのソフトウェア試験はこの仮想環境で実行できるため、実際のハードウェア環境での試験は最終的なハードウェアとソフトウェアの統合試験や性能試験のみに限定されます。さらに、統合コストを大幅に削減し、ソフトウェアの再利用性を高めることで、より強力なE/E アーキテクチャーにアップグレードできるようになります。それが可能になるのは、ソフトウェアの複雑さがハードウェアの複雑さから切り離されるからです。
- 車載ネットワークの抽象化レイヤーでは、仮想ECUの統合が可能になります。これは、仮想ネットワークドライバー (VCANや vEthernet など ) を備えたソフトウェアディファインドビークルのネットワークを構成しています。ECUと車両ネットワークの統合試験のほとんどは、この環境で実行できます。なお、ハードウェアとソフトウェアの統合試験は、車両を使用した実際のワイヤーハーネス試験に限定されます。この抽象化により、車両とのインターフェイスが分離され、車両開発から切り離したE/Eアーキテクチャーの開発が可能になります
- ハードウェアから分離された機能開発では、SOP後の機能の提供が可能になります。顧客の要求または市場分析の結果に基づく顧客機能の差別化が、短期間で実現できるようになります。
- クラウドバックエンドサービスを利用した車載オフボード機能開発をシームレスに行うことができるようになります。モビリティサービスや複雑な安全・セキュリティサービス (自動運転には必須) を含むフリート監視は、クラウドバックエンドから切り離されています。
ソリューションの取り組み
クラウド自動化ソリューションとCI/CD/CT手法の適用によって、仮想ハードウェアターゲットを使用した試験環境の拡張やソフトウェアテストケースの自動的な実行を高速化するために必要な試験キャパシティの提供、短時間での高いソフトウェア試験網羅率の達成など、多くの目的が達成されます。仮想ECU統合試験についても同様です。
必須であるハードウェアとソフトウェアの統合試験に焦点を当て、広範なハードウェアターゲットや試験車両でのソフトウェアの手動デバッグを排除することで、ハードウェアとソフトウェアの統合時間を大幅に短縮できます。さらに、機能開発が迅速に進展し、より短い期間でハードウェア要件も満たすことが可能になります。
ソフトウェアはハードウェア開発を推進します。
ソフトウェアは製品として開発され、その後もOTA機能を活用して現場でアップデートされることになるため、SOPの後にもソフトウェアに関するマイルストーンを追加で設定する必要があります。
バックエンドサービスを通じて提供する車載機能については、複雑な車載ソフトウェアを (豊富なソフトウェア複雑性管理機能を備えている) クラウドバックエンドに分離することが可能です。
ソフトウェアはSOPの後も存続しますが、ハードウェア (車両) の下部構造は世代ごとに進化します。車両に搭載するソフトウェアについては、車両の世代に応じて常に適切なソフトウェアステータスを取得します。デジタルライフサイクルプロセスでは、ソフトウェアの管理と更新がライフサイクルの終わりまで継続されます。
早期に着手し、主導権を握る
プロセスの最初からハードウェアとソフトウェアを分けて個別に開発するソフトウェアファーストの開発アプローチを取れば、多くのメリットを享受できます。
- 開発サイクルを少なくとも6か月短縮
- より高い試験網羅率とソフトウェア品質により、SOPの安定性と予測可能性を向上
- 初期段階および導入フェーズ後の開発コストを削減
- OTA機能を活用して、ソフトウェアを製品として配信・展開することで新しいバリューストリームを構築