成長の原動力 | 2025年2月5日

AIの力で進化するメインフレームの未来

Chris Drumgoole
DXC Technology、グローバルインフラストラクチャサービス、エグゼクティブバイスプレジデント

 

メインフレームコンピューターは、数百万件の顧客との取引きといった膨大なワークロードを数秒で安定的に処理するなど、企業にとって最も重要な業務の一部を担い続けています。

そして、メインフレームはこのAI時代に新たな息吹を見いだし、単なるトランザクション用プラットフォームではなく、有益なインサイトを導き出し、ITダウンタイムを削減し、データをセキュアな状態で保持できるプラットフォームへと移行しつつあります。


メインフレームは高い処理能力と大容量データを効率的に取り扱うことができる性能の高さで知られており、AIの複雑な演算処理には理想的な選択肢です。

 





不正行為を未然に防止

 

デジタル時代において、銀行や、小売業者、その他の組織は、多大な金銭的損失やイメージダウンを引き起こす可能性のある無数の詐欺の手口に対して、ますます脆弱になってきています。

しかし、トランザクションが実行され、トランザクションデータが保持されるメインフレーム上で直接AIモデルを実行すれば、データを処理して利用可能にするまでの時間を最小限に抑えることができます。つまり、パターンのリアルタイム分析が可能となるため、不正の疑いがある行為を迅速に特定し、さらに調査するようフラグを立てることができます。

また、与信の自動判断ローン条件の自動変更といった他の業務もメインフレームプラットフォーム上で直接処理できるため、AIのインサイトを活用して、ビジネス上の意思決定を迅速かつ容易に下せるようになります。



DXCのHoganバンキングシステムに含まれている既存の決済承認コンポーネントをIBMのTelumチップと組み合わせて使用することで、銀行はすべてのトランザクションを対象にAIによる不正検知を行うことが可能になります。

これにより、銀行は迅速な対応で損失を防止し、顧客を保護できるため、Tier1資本(自己資本の中の基本的な項目)が平均的な銀行で年間1億2000万ドルの節減が期待されています。





いつでもそばに寄り添うアシスタント

 

急速に変化する現在のデジタル環境において、アプリケーションの複雑さと人材不足の深刻化が相まって、組織は急激な需要の増加に対応できなかったり、顧客の関心やニーズを満たすイノベーションを迅速に提供できなかったりする事態に直面しています。

メインフレームアプリケーションは、一体化された複雑な設計のため、理解することが難しく、保守も困難だと感じる開発者も少なくありません。

しかし、メインフレームの開発プロセスにAIを直接組み込めば、組織はサービスの問題が発生したときに効率的に対処し、最も必要なところにリソースを割り当てることができるようになります。

このプロセスには、既存のコードベースの理解促進や、コンピューターコードの再構築の自動化、変換されたコード部分の正確性のテストが含まれます。つまり、あるプログラミング言語から別のプログラミング言語にコードが変換された場合、変換後のバージョンが元のコードと完全に同じ機能を果たし、同じ結果を生成して、ロジックや動作にエラーも意図しない改変もないことを意味します。

また、COBOLやその他のプログラミング言語を理解できる開発者の数が減少している現在では、新しいAIツールが古い言語でのコーディング作業を支援することで、開発者はテストプロセスを自動化し、アプリケーションをより短期間で構築して、システム全体のパフォーマンスを向上させることができます。

これにより、開発者は創造力と探求心を要する、より複雑な作業に専念できるようになります。



将来に向けてメインフレームのスキルを高めることは非常に重要です。DXCのメインフレームアカデミーは、組織がAIとメインフレームの可能性を十分に活用できるよう、エンジニアに必要なトレーニングを提供します。

 





将来を見据えた運用重視のアプローチ

 

小さなIT障害でさえ、多額の損失とイメージダウンを招く恐れがあります。

しかし、メインフレームの運用にAIを組み込むことで、組織は近い将来、障害からの復旧にかかる時間を短縮し、重要なシステムをいち早く復旧できるようになります。

また、AIはどのようなイベントがいつ発生するかを予測できるようになります。これにより、企業活動への影響を回避または軽減するためのプロアクティブな対策を講じることもできます。

この未来像では、専門知識の必要性が薄れていき、幅広い層のメインフレーム開発者が効果的に活躍できるようになります。人材プールが広がることによって、複雑なシステムを限られたスキルセットで維持しなければならないというプレッシャーが軽減されるため、コスト効率の高いアプローチが現実のものとなります。





 

まとめ

メインフレームは長い間、静かな巨人としてテクノロジー分野を支えてきました。そして、より深いインサイトの抽出や、プロジェクトの複雑性の軽減、運用の効率化、不正の防止を容易にするAIと組み合わせることで、今後も進化し続けることが期待されています。

DXCのコンサルティング、エンジニアリング、テクニカル領域の専門家は、AIとメインフレームのテクノロジーを活用するために主要な業界のお客様を支援できる、独自の立場にあります。DXCは世界最大級のメインフレームサービスプロバイダーであり、毎秒100万回の命令と、毎日1000万件の自動化/AIトランザクションを管理しています。また、メインフレームコンピューターのメーカーを含むパートナーとの強固なパートナーシップも、DXCのメインフレームサービスを支えています。








著者について

Chris Drumgoole 
グローバルインフラストラクチャサービスのエグゼクティブバイスプレジデント。モダンワークプレイス、クラウド、インフラストラクチャ、およびセキュリティサービスを含む包括的なポートフォリオを統括しています。