卓越したカスタマーサービスを提供することは、通信などの消費者中心の業界では特に、きわめて重要な成功要因です。Vodafone Germanyは、世界最大級の電気通信事業者であるVodafone Group Plcの子会社で、ドイツ国内だけで3,500万人以上の消費者と企業顧客にサービスを提供しています。Vodafone Germanyは、技術的負債を減らし、処理速度をよみがえらせ、柔軟性を高めるために、レガシーのミッドレンジサーバーからクラウドに移行し、自社製のカスタマーサービスおよび請求システムのモダナイゼーションを図りました。

多くの企業では、老朽化したソフトウェアとインフラストラクチャでレガシーシステムを運用していますが、これが成長とイノベーションの妨げとなっています。また、古くなったコンポーネントは、コストの増加や、ダウンタイム発生率の上昇、セキュリティ上の問題増大につながります。Vodafone Germanyの場合、カスタマーサービスおよび請求システムは旧式のハードウェアとソフトウェアコンポーネントで稼働しており、すでにサポートが終了しているか、まもなくサポートが終了する状態でした。ハードウェアの更新だけでも、莫大な費用がかかると見込まれていました。しかも、大半のツールや、ライブラリ、展開プロセス、運用プロセスは、この20年間ほぼ変わっていませんでした。

そこでVodafone Germanyは、カスタマーサービスおよび請求システムをクラウドに移行し、新しく効率的なテクノロジーを段階的に採用すれば、より安定し適応性の高い環境になるのではないかと考えました。しかし、同社とその顧客に利益をもたらす新たなIT環境へのアップグレードは、容易な作業ではありませんでした。

複雑な移行の管理

DXC TechnologyはVodafone Germanyと長い協力関係にあり、約20年にわたってアプリケーション開発やインフラストラクチャサポートなどのITサービスを提供してきました。築き上げてきたこの信頼関係を基に、DXCはプラットフォームのモダナイゼーションに必要な要件の評価、および古いインフラストラクチャやツールから最新のプラットフォームへの移行に最適な方法の特定についてVodafoneから依頼を受けました。このプロセスでは、すべてのツールとビルドプロセスのアップグレード、ソースコードの移行とクラウド機能の採用、自動化されたCI/CDプロセスの導入、展開および運用プロセスの変革が必要でした。そして、そのすべてを、現行の業務を中断することなく達成する必要がありました。

アプリケーションのソースコードは500万行以上あり、その大半がC++で、一部がPL/SQLでした。積極的な開発が行われなくなったHP-UX上で稼働していたため、ハードウェアや、コンパイラ、ライブラリ、データベース、ツールなどのコンポーネントのほとんどはアップデートが困難であるか、不可能でした。

技術的負債を減らし、アプリケーションのセキュリティ、パフォーマンス、保守性を向上させるために、Vodafone GermanyがDXCと緊密に協力して決定した方法は、アプリケーションをRed Hat LinuxとKubernetesに移行して、コンテナテクノロジーを使用するようにリファクタリングし、それをサポートするインフラストラクチャをAmazon Web Services(AWS)クラウドに移行することでした。DXCは、Linux上で最新のツールを使って新しいアプリケーションをコンパイルおよびビルドしました。新しいコンパイラからは、何千もの新たなエラーや警告が報告されました。また、OracleデータベースとすべてのOracleクライアントライブラリをアップグレードし、サードパーティライブラリの一部を置き換え、新たなレプリケーションメカニズムとしてOracle GoldenGateを導入しました。独自のプロトコルについてはhttpsに置き換えたため、標準的なロードバランサーの使用が可能になりました。これによりVodafone Germanyは、クラウドコストを最適化する鍵となる自動スケーリングを活用できるようになりました。

鍵となるコミュニケーション

DXCはアジャイル開発アプローチを採用し、アプリケーションの小さな複雑でない部分から始めて、段階的にさまざまなコンポーネントを本番稼働させました。これにより、新たな展開プロセスを実践して成熟させ、CI/CDおよびGitOpsアプローチを使って自動化することが可能になりました。また、このアプローチにより、必要に応じてコンポーネントを簡単にロールバックすることも可能となるため、リスクを大幅に軽減できます。DXCは、大規模な修正についての概念実証を行い、前提条件を検証し、複雑な問題を完全に理解してから先に進みました。

しかし、この移行で本当に不可欠だったものは、古いシステムの仕組みに関する知識を持つ人材と、新しいテクノロジーがVodafone Germanyのビジネス目標の達成にどのように役立つかという専門知識を持つ人材を結びつけることでした。レガシーシステムの専門家は新しいテクノロジーのトレーニングを受け、クラウドに精通した専門家は古いシステムの詳細について学びました。チーム間の緊密な協力は、サイロ化や非効率的なチケットベースのコミュニケーションを避け、学びを共有することにつながりました。

提供した価値

効率の大幅な向上と、応答性とレジリエンスに優れたアプリケーション
コストの削減、技術的負債の軽減、安定性の向上
ビジネスの俊敏性向上
業務を中断せずに、クラウドベースのモダナイズされたシステムへの移行を実現

モダナイズされたクラウドベースのシステムのメリット

Vodafone Germanyの業務を支えるために不可欠なカスタマーサービスおよび請求システムは、業務の中断なくモダナイズされ、完全にサポートされたハードウェアとソフトウェアで稼働するようになりました。このような大規模なオーバーホールでは、新たなビジネス価値の創出を一時的に停止せざるを得ないこともよくありますが、このモダナイゼーションではその必要はありませんでした。DXCは同じリリースの一環として、新たなビジネス機能を提供し続けました。

アップグレードされたアプリケーションでは、応答性とレジリエンスが大幅に高まり、パフォーマンスと効率が大きく向上しました。システムは現在10分の1のインスタンス数で動作しているため、展開が大幅に高速化され、ロールバック手順が合理化されました。さらに、システム全体のパフォーマンスも大幅に向上し、たとえば最大再接続時間は10分の1に短縮されました。もう1つのメリットは、システムを単一のデータセンターから3つのAWSアベイラビリティーゾーンに移し、レジリエンスを高めたことです。これにより、Vodafoneが古い技術について専門家のノウハウに頼らざるを得ないケースが、劇的に減りました。

KubernetesやAWSのクラウドプロバイダーサービスを活用することで、マイクロサービスなどの新たなテクノロジーを徐々に導入することができ、イノベーションをさらに加速できる可能性が広がりました。DXCの既存システムに関する知識、アプリケーション開発、AWSクラウドテクノロジーの導入経験を組み合わせることで、モダナイゼーションは大きな成功を収めたのです。

そのほかのお客様事例

アイテムを更新しています。