新鮮で高品質な食品をより早く提供することに情熱を燃やしているオーストラリアのレストランフランチャイズ事業者は、カスタマーエクスペリエンスを向上させ、プロセス、テクノロジーとその成果を継続的に改善し革新することで、事業を成功させました。
食品テクノロジー分野のリーダーである、世界的に有名なこのレストランチェーンは、顧客と従業員の両方の要求に応え、サービスインタラクションを充実させるために、アプリでの注文、音声アシスタント、人工知能、拡張現実を導入しました。また同チェーンは、毎日の業務を時間どおりに完了できない原因となっていた冗長なプロセスや労働集約的なタスクを削減し、財務監査とコンプライアンスに対応するためのタスクも見直すことで、その勢いを維持し続けています。
ビジネス上の課題
このレストランチェーンの財務チームは、ワークフローが複雑なうえ、手作業で時間がかかるため、財務/規制報告や企業コンプライアンスを効果的に管理することが難しいと感じていました。煩雑でばらばらなプロセスにより、月末や年度末に必要な作業をこなせない場面も多い状態でした。加えて、ますます複雑化するビジネス環境の中で、企業の法令遵守のガバナンスはより困難になっていました。
コンプライアンスプロセスでは、一貫性と透明性がきわめて重要です。このため、説明責任を負うチームは、ガバナンスと意思決定を支援するツールや情報を活用して、コンプライアンスタスクの現状を把握する必要があります。どのようなプロセスでも、大勢の人によってさまざまなタスクが実施され、それぞれ提出前には複数のレベルの承認を得なければなりません。これらすべてを管理するために、スプレッドシート、電子メール、インスタントメッセージ、電話、その他の手作業など、無計画で非効率的な手法が混在していました。
この時間がかかる手作業のプロセスでは、進捗状況の追跡が難しく、成果物の状態や、特定のタスクの完了にかかる時間、遅延の予測や後戻りへの対応など、全体像を把握することはできませんでした。さらに複雑さを増したのは、各組織やチーム間で一貫性がない、オーストラリア、アジア、ヨーロッパという3つの異なる財務管轄区域にまたがってコンプライアンスを維持する必要があったことです。
正式なワークフロー構造が無く、納期の遅れや罰金が発生するリスクを抱えていたため、このプロセスを合理化し自動化することがきわめて重要でした。このため、同レストランチェーンは、プロセスの最新化と標準化、ボトルネックの特定と軽減、タスク全体にわたる透明性の向上に役立ち、タスクの状態がわかる統一ビューを備えた、一貫したソリューションを求めていました。
ワークフローと承認を自動化できれば、このレストランチェーンの生産性および効率の改善につながるため、法人としての財務およびコンプライアンス関連の期限を厳守することが可能になります。
ソリューション
このレストランチェーンは既に当時からMicrosoft Dynamicsを利用していたため、問題の解決をMicrosoftに持ちかけました。概念実証が行われ、財務とコンプライアンスのワークフローを自動化し、既存のプロセスを強化して、データの統一ビューに関する機能(アクセス、更新、作成)を推進するために、Microsoft Power Platformとその機能について提案を受けました。Power Platformのコンポーネントは、単体で利用することも、複数組み合わせて利用することもできます。また、Office 365や、Microsoft Dynamics 365、Azure、またはその他の多くのアプリや、ビジネスソリューション、データソースと統合することもできます。
DXC Technologyは、Power Platformに関する豊富な経験と知識を兼ね備えていることから、最適なパートナーとして選ばれました。さらに、同レストランチェーンは以前にも、DXCのMicrosoftアプリケーション関連サービスを利用してERPソリューションを導入したことがあったため、DXCはお客様の組織の内部プロセスと変革目標を十分に理解していました。
DXCのPower Platformチームは、デザイン思考のアプローチによる綿密なワークショップを実施し、お客様のビジネス上の課題の抽出、問題の定義、さまざまな戦略とソリューションの明確化を行いました。
DXCは、同レストランチェーンと密接に協力し、Microsoftのテクノロジーを基盤とした、以下のものを含む完全なコンプライアンスタスク管理ソリューションを構築しました。
- ユーザーインターフェイスを提供し、エンタープライズ機能へアクセス可能なモデル駆動型アプリを作成するためのPower Apps
- プロセスを自動化するためのPower Automateクラウドフロー
- プロセス全体を管理するためのPower Automateビジネスプロセスフロー
- データストレージ用のDataverseと、システムテーブルや、セキュリティロール、ビジネスルール、ビュー、ダッシュボードなどを実装するためのCommon Data Model定義
- 電子メール統合のためのOutlook
- ドキュメントを保管するためのSharePoint Online
このソリューションは、各段階でデモンストレーションとフィードバックを行いながら、一連のスプリントを経て構築しました。DXCはソリューション構築の後、フランチャイズ事業者のチームを強化し、成功が組織全体に行き渡るように、トレーナー研修セッションを実施しました。
コンプライアンス成果物の一例としては、このレストランチェーンの年次報告書がありました。これには、100個のタスクからなる表が存在することもあり、さまざまな部門やチームの大勢の従業員が複数の地域にわたって記入する必要がありました。以前は、このプロセスをスプレッドシートや、電子メール、その他のメッセージにより手作業で行っていましたが、現在ではこの処理が完全に自動化されました。タスクが各所有者に割り当てられ、所有者はタスクの完了時に確認を行います。
成果
コンプライアンスタスク管理プロジェクトでは、デジタル化が必要なきわめて重要な各プロセスを「コンプライアンス成果物」と呼んでいました。
コンプライアンス成果物の一例としては、このレストランチェーンの年次報告書がありました。これには、100個のタスクからなる表が存在することもあり、さまざまな部門やチームの大勢の従業員が複数の地域にわたって記入する必要がありました。以前は、このプロセスをスプレッドシートや、電子メール、その他のメッセージにより手作業で行っていましたが、現在ではこの処理が完全に自動化されました。タスクが各所有者に割り当てられ、所有者はタスクの完了時に確認を行います。承認者は、すべての作業を1か所で確認でき、関連するすべてのアクティビティ、ドキュメント、電子メール、電話での会話がタイムラインに記録されます。
タスクの期限が迫ったり、期限を過ぎたりした場合は、ワークフロー全体を通して、電子メールの自動通知によって担当者にアラートが送信されます。タスクの期限が過ぎると、承認者にも電子メールが送信され、さらに対応が遅れるとCFOにエスカレーションされます。これにより、期限を守ろうという意識が高まり、締め切り間際になってタスクが粗雑に行われることを防止できます。
SharePointとも統合され、タスクにリンクされたドキュメントのアップロード、ダウンロード、表示が可能になりました。統一ビューへのアクセスによって手入力や人的介入が減り、データの完全性が向上したことで、データを最大限に活用できる組織が現実のものとなりました。
「このソリューションのユーザー導入が成功を収めているため、プロセスの管理と可視性の強化が必要な他の事業部門にもPower Platformを展開する予定です」
メリット
このソリューションは、最新化と自動化によって同レストランチェーンのプロセスを変革し、複雑な作業と手動介入を削減することで、複数の管轄区域にまたがっていても、重要なコンプライアンスタスクの期限を厳守できるようにしました。また、オーストラリア、アジア、ヨーロッパにわたって協業者が存在することで、コンプライアンスタスクや、オーストラリア税務局などの規制当局への報告がさらに効率的に管理されています。
「このソリューションのユーザー導入が成功を収めているため、プロセスの管理と可視性の強化が必要な他の事業部門にもPower Platformを展開する予定です」と、同レストランチェーンの広報担当者は話しています。
「お客様は、法令に関するコンプライアンスタスクと財務報告タスクを管理および自動化するシンプルなソリューションを実現し、効率性と生産性の向上を推進しています。Microsoft Power Platformにより、プロセスやワークフローを数か月や数年といった単位ではなく、数日から数週間で大幅に改善できます」
Peter Pontel DXC Technology、プラクティスデリバリーマネージャー
さらに、期限を課せられた担当者が実施しているタスクの管理や可視性が強化され、ワークフローと承認が自動化されたことで、タスクの処理時間と対処が加速されたというメリットもあります。上級管理職は、承認者ダッシュボードですべてのタスクの状態を確認することができ、重要なタスクや緊急のタスクを他のチームメンバーに割り当て直すこともできます。このダッシュボードは、期限を過ぎた項目、重要なマイルストーン、CFOの承認待ちのコンプライアンスタスクを1つの統合されたビューに表示し、完全な透明性を提供します。
また、クローニングによって簡単に新しいコンプライアンス成果物を作成できるため、Power Platformは、同レストランチェーンが展開を加速し、迅速に投資回収を達成する原動力にもなっています。コンプライアンス成果物の所有者が、既存の成果物(100個以上の個別タスクが含まれることもあります)をクローニングするだけで、すべてのワークフローと期日が自動的に計算されます。毎月作成する成果物もあるため、これは「救いの手」とも言える機能です。またこのシステムは、許可されている時間よりも長くかかっているタスクを認識できるため、割り当てる時間を延長するオプションを示して見直しを行うよう、タスクにフラグを立てることもできます。
DXC TechnologyのプラクティスデリバリーマネージャーであるPeter Pontelは次のように話しています。「お客様は、法令に関するコンプライアンスタスクと財務報告タスクを管理および自動化するシンプルなソリューションを実現し、効率性と生産性の向上を推進しています。Microsoft Power Platformにより、プロセスやワークフローを数か月や数年といった単位ではなく、数日から数週間で大幅に改善できます」
重要なコンプライアンスワークフローの最新化と透明性の強化を財務チームにおいて実現したことで、このレストランチェーンは現在、顧客と従業員のどちらにとっても食品テクノロジー分野でのリーダーであり続けるために、古くて時代遅れとなったその他のプロセスを取り除く方法についても検討しています。