2020/11/30
by 吉見 隆洋 / ウィリアムズ 有彩 / 金目 尚子

 

2020年の新卒社員研修をオンラインで実施した企業は、かなりの割合を占めたことでしょう。

DXCテクノロジー・ジャパンでも、3か月間の研修プログラムの大半をオンラインで実施しました。この初めての試みに、人事・研修チームでは色々な準備をして臨んだものの、想定外の出来事を含めオンラインならではの課題が次々と明らかになっていきました。

その一方で、「オンラインだからこそできる教育、運営、そしてその本質」に気づくことができたのは大きな収穫です。

今回は、新人研修運営に関わったJapan CTO吉見と人事・研修メンバーのウィリアムズと金目が、DXCテクノロジー・ジャパンのオンライン新卒社員研修へのチャレンジをご紹介します。グローバルIT企業ならではの、海外チームと最新ツールで連携したユニークな実習に加え、人事・研修チームの創意工夫の一端が伝われば幸いです。

 

最も力を注いだのはテクニカル研修

DXCテクノロジー・ジャパンが2020年4月に迎えた新卒社員は38名。その1/4を海外出身者が占めているところは、グローバルIT企業ならではかもしれません。3か月間の新卒社員研修の大きな目的は、企業理念や社内ルールの理解、ビジネス環境や業務内容の理解、基礎的な技術の習得、社員間のコミュニケーションです。カリキュラムは、オリエンテーション、ビジネス研修、テクニカル研修の3軸で構成されており、例年であれば集合研修で実施すべきところを、オンライン中心で行いました。

「テクノロジー」を社名に持つ我々が最も力を注いだのは、やはりテクニカル研修です。カリキュラム全体の3/4程度を占め、DXC University(eラーニングプラットフォーム)でプログラミングやデータベースの基礎を学びながら、DXCデジタルトランスフォーメーションセンター所属の海外エンジニアによるオンラインのプログラミング実習を通じて学びを深めていきました。

次に重視したのが英語研修です。DXCテクノロジー・ジャパンは、グローバルチームと協業しながら日本のお客さまにサービスを提供できることが大きな価値であり、そうしたプロジェクトが多くを占めています。その中で、ビジネスとテクニカルの両面から、英語によるコミュニケーションスキルは不可欠です。ネイティブスピーカーもいれば、英語が苦手な新卒社員もいましたが、グローバルで活躍する人材となるために言葉の壁を乗り越えてもらわなければなりません。

 

新卒社員とのエンゲージメントをどう結ぶか
ーー手探りながらも迅速に対応した運営

オンライン研修の難しさを一言で表現するなら、「信頼関係としてのエンゲージメント」を「どのようにより深く結ぶか」という一言に尽きます。

エンゲージメントとは、約束や契約、あるいは婚約と、文脈によって色々な意味があります。ここでいうエンゲージメントは、単なる雇用関係ではなく、互いのつながりや愛着心、更には信頼関係といったことまで含む広い概念を指しています。

運営する我々が手探りのオンライン研修であっただけでなく、スーツを着て出社し、顔を合わせて集合研修を受けるつもりでいた新卒社員にも大きな戸惑いがあったことでしょう。これまでとは異なるエンゲージメントの在り方を共に模索しなければなりませんでした。

人事・研修チームは、研修内容を正しく身に着けてもらえるよう細心の注意を払うだけでなく、メンタル面でのケアも重視しました。例えば、一人ひとりの発言の機会を増やして参加意識を高めるとともに、講師とのインタラクションや新卒社員間のコミュニケーションの場、人事・研修チームに相談できる仕組みなどを設けました。一方で、新卒社員全員が、同じレベルのITと英語のスキルを持つわけではありません。そこで、レベルの違いによる課題が発生した時には運営方法を柔軟に見直しました。

具体的には、能力別に班を作らず、全て班の総合力が均一となるよう、性別、国籍、能力や特性が異なるメンバーを配置することで、チームで刺激し合い、助け合いながら、研修を乗り越えていく方向に重きを置きました。結果的に、ITに強いメンバーが自グループの進捗を確認し、英語も流暢なメンバーが通訳をし、デザインが得意な人が資料をまとめるなど、新卒社員が自分の強みをアウトプットすることで、組織として成果を出していく良い訓練の場となりました。更に、弱点となるスキルについては、オンラインツールにより自己学習を継続することで克服を目指していきます。

多様性が活きるDXCの環境において、新卒社員が自分で判断し、必要なリソースやサポートを取り付け、主体的に行動を取っていくことはキャリア形成の観点からも重要です。オンライン研修であってもそのような主体性を培える場を提供し、同期だけでなく研修に関わる数十名の先輩社員と共に一体となって取り組む過程からエンゲージメントは高まると考えています。

過去の経験に囚われず、軌道修正の判断をタイムリーに行うことが運営側としては重要でした。

 

試行錯誤から、状況に応じた「エンゲージメントの本質」を見出す

この未知の状況下では、試行錯誤の中でしか、エンゲージメントの本質がわからない――というのが、初めてのオンライン新卒研修を通じて私たちが得た実感です。そして、研修の質と価値、新卒社員を惹きつける「魅力」が、今まで以上に厳しく問われることも強く感じました。見方を変えると、「オンラインだからこそできるやり方もある」と気づかされた研修だったとも言えます。

また、今回の運営は、課題を見つけたらやり方を想像し、勇気をもって方向を決め、現場で運用していくループを迅速に回していく、改善活動そのものでした。

最近のオンラインセミナーの進化には目を見張るものがあります。チャットでのインタラクション、リアルタイムでのアンケートだけでなく、エンターテインメント性を加味した演出が、オンラインメディアで目の肥えた新卒社員の研修には求められていくでしょう。そこまでしなくても、と思われますか?(笑)いいえ、デジタルネイティブな皆さんに合ったやり方が生まれつつあると、今回の研修で強く感じました。最適解とは言いませんが、大事なヒントと実戦経験を、今年の新人研修で手に入れることができました。まさに必要は発明の母です。

来年以降は、知見・経験を手に入れた人事・研修チームが更に活躍してくれると思います。

吉見も、より内容を洗練して、引き続き講師役の一旦を担いたいと思います。

 

About the author

吉見 隆洋 (Takahiro Yoshimi)
DXCテクノロジー・ジャパン CTO。製造業向けサービスならびに情報活用を中心に20年以上IT業界に従事。業務分析の他、各種の講演や教育にも携わる。東京大学大学院 工学系研究科 博士課程修了。博士(工学)、PMP

ウィリアムズ 有彩 (Arisa Williams)
DXCテクノロジー・ジャパン、シニア人事ビジネスパートナー。ITサービスや医療業界において15年に渡り人事に従事。変革に伴う人材・組織開発、人事制度設計に携わるほか、現場感をもって人事戦略をリード。グローバルの育成フレームワークを効果的に活用し、若手人材、リーダー育成、タレントマネジメントを後押し。D&Iによる組織活性化、チームマネジメントに注力し、女性の異業種ビジネスリーダーシップ塾の幹事を務める。

金目 尚子 (Naoko Kaname)
DXCテクノロジー・ジャパン、人事部 HR Business Partner (HRBP)。DXCにてデリバリー、コーポレートファンクションおよびセールスオペレーションのHRBP業務に従事。 これまでにもメーカー、コンサルティングファーム、エンジニアなど幅広い業界にて人事業務に携わった経験を持つ。

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